赤外線3波長を同時観測 天体カメラ開発 国産検出器三つ使用は国内初 「太陽系外惑星の大気成分解明に活用」 鹿児島大大学院准教授ら

 2023/03/25 12:07
望遠鏡に取り付けられたkSIRIUS(鹿児島大大学院提供)
望遠鏡に取り付けられたkSIRIUS(鹿児島大大学院提供)
 鹿児島大大学院理工学研究科の永山貴宏准教授(47)=赤外線天文学=らは24日、電磁波の一種・赤外線を3波長同時に観測できる天体用カメラを開発した、と発表した。国産検出器三つを使ったものは国内初。永山准教授らは「鹿大入来観測所にある1メートル望遠鏡での観測がより充実する」と期待を寄せる。

 新カメラは「kSIRIUS(ケーシリウス)」。国立天文台や鹿大などの研究チームが静岡県の企業と開発した検出器三つを内蔵する。今年卒業した赤峰恭太郎さん(24)ら鹿大大学院生4人が中心となり、8年かけ製作した。

 天体は赤外線や可視光線を含む電磁波を発しており、複数の波長で観測すればより精密に特徴を捉えられる。中でも赤外線は宇宙空間のちりなどによる光の吸収や散乱が少なく、可視光線で見えない天体が見えたりさらに明るく観測できたりする。鹿大には可視光線2波長を捉えるカメラが既にあり、組み合わせれば電磁波計5波長を同時観測できる世界的に珍しい装置になるという。

 観測には高感度の検出器が必要だがアメリカの1企業製品に依存。2001年の同時多発テロ以降は輸出管理が厳しくなり、入手が難しくなっていた。

 同日は鹿児島市の鹿大で記者会見があった。出席した永山准教授は「国産検出器で観測することが長年の宿願だった」。赤峰さんは「太陽系外惑星の大気成分解明に活用できたら」と話した。