開院108年の産科医院 祖父の代から続くお産の取り扱い停止へ 「地域で唯一」でも院長が「苦渋の決断」をした理由 枕崎

 2023/03/26 11:00
地域のお産を支え108年の歴史がある森産婦人科=枕崎市西本町
地域のお産を支え108年の歴史がある森産婦人科=枕崎市西本町
 鹿児島県枕崎市の森産婦人科が6月末で分娩(ぶんべん)の取り扱いを停止する。108年の歴史を持ち、ここ数年は南薩唯一の産科医院として貢献してきた。開業医が地方で産科医療を続けるのが困難な状況に、少子化と新型コロナウイルス下の出生数減が追い打ちをかけた。

 5月に新築移転開業予定の県立薩南病院(南さつま市)に産婦人科が常設されることになり、南薩に「お産難民」が生じる事態は避けられるが、森明人院長(66)は「取り扱い停止は苦渋の決断」と打ち明ける。妊婦健診や婦人科の外来診療は続ける。

 森院長によると、1915年に祖父の森節義さんが開院。94年に3代目を引き継ぎ、これまで約6000人のお産に関わった。しかし少子化が進み、年間400件を超えていた分娩取扱数が2016年以降は200件台に減少。22年は222件と経営的に厳しい水準まで落ち込んだ。

 加えて、地方では看護師や助産師の人員確保が難しくなった。さらに、昼夜を問わずお産に対応しなければならない産科医の肉体的、精神的負担の大きさも決断の背景にあるという。

 森院長は「祖父の代からのお産の取り扱いをやめるのは心苦しく残念。ただ、社会情勢の変化で個人病院で、できることには限界があることも分かってほしい」と話している。

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