「ワクチン接種疲れ」で関心薄れる…医療体制は?学校は? 新型コロナ、鹿児島の3年を振り返る
2023/03/26 12:00

ドクターヘリで離島から搬送された患者を病院救急車に運ぶ医師ら=2022年8月、鹿児島市の浜町ヘリポート
■医療体制
感染拡大の波が到来する度、県内の医療提供体制は逼迫(ひっぱく)した。2022年1月以降のオミクロン株の流行では、かつてないスピードで感染者が爆発的に増加。コロナ患者向けに準備した病床の使用率は80%に迫った。医療従事者の感染も大幅に増え、医療機関は一部機能停止に陥った。
オミクロン株の派生型「BA・5」に置き換わった22年夏の第7波では、病床使用率が75.2%まで上昇。第8波が到来した今年1月には過去最高78.9%を記録した。いずれも一般医療を制限し、コロナ医療に優先順位を付けて対応せざるを得ない状況になった。
軽症や無症状向けの宿泊療養施設も入所希望者が集中。20カ所を確保するが、感染拡大時は高齢者や持病がある人、重症化リスクがある家族と同居している人を優先的に案内した。
医療機関は感染拡大に伴う職員の欠勤に頭を悩ませた。第7波では、感染したり、濃厚接触者になったりする医療従事者が一時千人を超えた。救急の受け入れ停止のほか、病棟の閉鎖や手術の延期が相次いだ。
自宅療養者の急増などを受け、県は22年8月、「コロナ・フォローアップセンター鹿児島」を開設した。健康観察や相談対応、血中酸素濃度を測るパルスオキシメーターや生活支援物資の配送を民間業者に委託。感染者が安心して自宅で過ごすための体制を整えた。
20年8月に開設した「コロナ相談かごしま」には後遺症に関する相談が380件以上寄せられ、オミクロン株が主流の22年1月以降が9割を占めた。県は同年8月から、後遺症に対応する医療機関をホームページに掲載している。
5類感染症に変更となる5月8日以降は、幅広い医療機関による対応に段階的に移行する。外来や入院、自宅療養者の対応など新たな医療体制の構築が急務となっている。
■ワクチン
新型コロナウイルスのワクチン接種は2021年2月に医療従事者から始まり、最も多くて5回目まで進んだ。2回接種した県民は全人口の80%に上るのに対し、22年9月開始のオミクロン株対応ワクチンは45%と低迷。長引くコロナ禍で「接種疲れ」も指摘され、関心は薄れたとみられる。
一般住民の接種は、21年4月に65歳以上の高齢者を皮切りに始まった。「感染対策の切り札」とされたワクチン接種が高齢層を中心に進んだこともあり、デルタ株が猛威を振るった同年夏の「第5波」の感染者は、若い世代の割合が急増した。
接種や感染拡大による免疫獲得で流行はいったん落ち着いたが、22年に入るとオミクロン株がまん延。9月から派生型「BA・1」と従来株由来の成分の2種類を含む新ワクチンの接種が始まり、その後、別の派生型「BA・5」対応品の導入が進んだ。
22年は3月に小児(5~11歳)、10月に乳幼児(生後6カ月~4歳)への接種も始まり、接種対象はほぼ全ての国民に拡大した。県内の接種率は小児3回目が9%、乳幼児3回目が1%にとどまる。12歳以上を含め、いずれの接種率も全国と同水準になっている。
4月からの接種は、高齢者ら重症化リスクの高い人や医療従事者は5~8月、9~12月の年2回になる。9~12月はそれ以外の全ての人も対象で、年1回が基本となる。23年度の接種費は無料。
■経済・雇用
相次ぐ緊急事態宣言やまん延防止等重点措置で行動が制限され、観光や外食を中心に打撃を受けてきた県内経済。コロナ禍3年目は後半になって、回復の動きが進んだ。国や自治体の支援策もあって需要が急激に増加。新たに人手不足という問題が顕在化し、物価高も重なって楽観できない状況が続く。
県内宿泊者数は2019年の836万人から、20年が約4割減の512万人、21年は492万人と減少を続けた。22年は旅行割引の効果で前年より約3割増の635万人(速報値)と上昇。毎月の観光動向調査で、同年後半はコロナ前の水準に達した。外食も「ぐりぶークーポン」などの需要喚起策もあって上向いた。
一方、厳しさが続くのが交通事業者。九州運輸局によると、県内乗り合いバス2社とタクシー6社の輸送人員は22年後半も19年の8割前後で推移し、回復が鈍い。経営環境の悪化から、バスやフェリーの運賃値上げやタクシー事業者の廃業が相次ぐ。
全体的に回復の足かせになっているのが人手不足だ。需要が戻ってもコロナ禍で離れた働き手を確保できず、飲食店やホテルが客の受け入れを抑制したり、バスが減便を続けたりしている。
22年の県内の有効求人倍率は1.35倍と、統計開始以降の最高に並んだ。人材確保が困難になったこともあり、南日本新聞社などが実施したアンケートで、初任給引き上げなど待遇改善を図る企業が増えている。
■教育現場
2022年は10代以下を中心に爆発的な感染拡大が相次ぎ、鹿児島県内の学校現場は対策に追われた。一方でコロナ禍が3年目を迎え、国は「黙食」などの感染予防対策を徐々に緩和。新年度からはマスク不要の通知も出され、日常が戻ることへの期待や急な方針転換への戸惑いが交錯した。
同じ方向を向き静かに給食を食べる「黙食」について、文部科学省は昨年11月、適切な対策を取れば「会話は可能」と通知した。政府が基本的対処方針から文言を削除したことを踏まえた。県内では通知を歓迎しつつも、感染増加への懸念などからそのまま続けた学校は多かったとみられる。
政府は23年1月、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを季節性インフルエンザと同等の「5類」への5月引き下げを決定。さらに3月からはマスク着用は個人判断とした。
これを踏まえ、文科省は3月の卒業式で卒業生のマスクを「基本的に不要」と通知。県内各学校でも卒業生が緊張した面持ちで出席。久しぶりにコロナ前の日常が一部戻った。
4月の新学期からはマスク着用自体を求めない、としている。換気などの対策や着用を希望する児童生徒への配慮は引き続き求める。
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