長引くコロナ後遺症「月3日働くのが精いっぱい」 めまい、倦怠感、せき…軽症者や若年層にも症状

 2023/03/27 11:00
後遺症を抱えながら仕事する日渡恵子さん=鹿児島市の「かわもと記念クリニック」
後遺症を抱えながら仕事する日渡恵子さん=鹿児島市の「かわもと記念クリニック」
 鹿児島市の「かわもと記念クリニック」で事務職として働く日渡恵子さん(48)は、新型コロナウイルスの感染から3カ月たった今も、せきや息切れの後遺症に悩まされている。以前と比べ症状が落ち着いてきたが、職場柄、勤務中にせきが出ないか不安で、せき止め薬が手放せない。「まさかこんなに長引くとは」。表情は曇りがちだ。

 体に異変が起きたのは昨年の暮れ。PCR検査で陽性と診断された。発熱はすぐに収まる軽症で1週間の自宅療養後に職場復帰した。

 しかし療養中よりもせきが出るようになった。勤め先で診察を受け、薬を飲んでも治まらない。特に乾燥した日はせき込み、人との会話もままならない。ぜんそく治療用の吸入器を使っても症状は続いた。

 日渡さんにぜんそくなどの持病はない。コロナ禍の3年、ワクチンはいち早く接種し、体調管理や感染対策には十分気を使ってきた。それでもかかるコロナの感染力に驚かされた。

 勤務先には後遺症外来もある。倦怠(けんたい)感を訴えスタッフに体を支えられながら受診する患者の姿も目の当たりにした。「コロナはただの風邪と言われることもあるが甘く見てはいけない」。実感がこもる。

 姶良市の40代看護師の女性も後遺症に悩む。昨夏に感染。療養期間が終わった後も倦怠感、耳鳴りなどが続いた。特にめまいがひどく、仕事にも支障を来し、勤めていた高齢者施設を12月に退職した。現在でも耳鳴りがあり、月3日ほど宿泊療養所で働くのが精いっぱいだ。女性は「できれば病院でフルタイムで働きたいが…。万全な体調になるのはいつになるのだろう」と悔しさをにじませる。

 国の研究班は2021年2月までに入院したコロナ患者約千人を追跡調査したところ、陽性診断から半年たった段階で倦怠感を訴える人が16%に上り、集中力低下は11%、呼吸困難も10%に達した。

 県によると、「コロナ相談かごしま」を開設した20年8月以降、後遺症の相談は380件以上寄せられた。9割はオミクロン株に置き換わった22年1月以降だ。県は後遺症の外来対応医療機関を同年夏からホームページで公開。23年2月末時点で97機関が対応する。

 霧島市の徳永医院の徳永大道院長(51)は、主に呼吸器症状を訴える後遺症患者を100人以上診てきた。昨年以降、患者は軽症だった人や若年層にも目立つようになったという。

 新型コロナは5月に感染症法上の扱いが変わり、さまざまな対策は縮小される方向だ。一方で、後遺症は発症の仕組みもよく分かっておらず根本的な治療も確立されていない。そのため置き去りにされる不安を抱く患者もいる。

 後遺症と付き合いながら勤務を続ける日渡さんは「今後、患者への支援や研究が進んでくれたら」と話す。徳永院長は「症状によっては治療で長期休暇が必要なケースもある。専念できるよう周囲の配慮も必要」と訴える。

(連載「かごしまコロナ 揺れた3年」より)

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