慣例は2年、でも辞められない…馬毛島自衛隊基地に反対の西之表市議会議長、辞職願が1票差で否決される 賛成派が多数維持に成功

 2023/03/29 09:00
議長辞職願が否決され、再び議長席に座る川村孝則氏(左)=28日午前、西之表市役所
議長辞職願が否決され、再び議長席に座る川村孝則氏(左)=28日午前、西之表市役所
 鹿児島県の西之表市議会は28日、定例会最終本会議を開き、同市馬毛島への米軍機訓練移転と自衛隊基地整備に反対する川村孝則議長(63)=7期目=が冒頭、任期2年の慣例にのっとり議長辞職願を提出したが、反対7、賛成6で否決された。基地整備の賛否が7人ずつで伯仲し、採決に加われない議長職を両派が押しつけ合う形になっていた。

 川村議長は次回本会議まで継続することになり、賛成派が優位を保ったまま、基地整備に伴う米軍再編交付金事業17億1506万円を盛り込んだ2023年度一般会計当初予算(総額126億6600万円)など13議案を可決した。

 川村議長は2月の臨時会で辞職意向を表明。賛否両派が水面下で協議を続ける中、複数の議員によると、今月24日の全員協議会で、反対派の鮫島市憲議員(73)=3期目=が後任に立候補する意思を示していた。

 一方、賛成派は「辞職を認めさせて議長選に持ち込む算段で、本会議で鮫島氏は手を上げない」との疑念が拭えず、川村氏の議長辞職願を否決する方向に動いたとみられる。両派の信頼関係の欠如や調整不足が露呈した格好となった。

 川村議長は閉会あいさつで「極めて遺憾だ」と述べ、報道陣には「県内でも全国的にも珍しい事案で、今の市の現状を表している」と説明した。今後の辞職願の再提出については「いろいろと検討したい」と言葉を濁した。

 地方自治法は正副議長の任期を「議員の任期による」とする。通常4年と考えられている一方、多くの地方議会では一般質問する機会の確保や多くの議員が経験できるようにと、慣例や申し合わせで1~2年としているのが実情だ。西之表市議会も申し合わせ事項に「2年」と明記していた。

 28日の定例会最終本会議後、川村孝則議長は報道陣に「これまで選挙を受けた上での再任はあったが、辞職願を認めないのはないと思う」と説明。同日は、川村議長と同じく同市馬毛島の自衛隊基地整備に反対する長野広美議員(66)=6期目=の副議長辞職願も否決され、「極めて遺憾」「歴史に残る」との言葉を使い、辞職を認めない整備賛成派への抗議姿勢を示した。