なぜ? 新型コロナの3年で子ども食堂の数が3倍に 助けを、交流を求める人たちの拠り所に

 2023/03/30 11:00
感染症対策を徹底しながら弁当を手渡すスマイルキッチン「にんぎまんま」のスタッフ(左)=11日、枕崎市国見町
感染症対策を徹底しながら弁当を手渡すスマイルキッチン「にんぎまんま」のスタッフ(左)=11日、枕崎市国見町
 11日午前11時半、待ちわびた人たちに弁当の配布が始まった。鹿児島県枕崎市のスマイルキッチン「にんぎまんま」が市郊外で月1回開く子ども食堂には、毎回幅広い世代が訪れる。開始前から20人以上が列をなし、談笑しながら待ち時間を過ごす。用意した250食は開店から約1時間で完売した。

 孫と一緒に訪れた同市大塚南町の小田弘さん(77)は「特に新型コロナウイルス以降、弁当が安価に手に入るのは経済的に助かる」と感謝。「イベントもあり世代を超えて利用できる。月1回の楽しみ」と笑う。

 同キッチンは、市内唯一の子ども食堂として2019年、多世代交流型の会食方式で発足した。フードバンクや地元農家から食材提供を受け順調に利用者を伸ばしたが、コロナの影響で一変。流行が始まった20年の初めは4カ月ほど休止を余儀なくされた。

 茅野寿満子代表(70)は自宅待機が続きストレスをため込む児童生徒の話をよく聞いた。「少しでも笑顔を取り戻したい」とスタッフで知恵を絞り、飛まつが抑えられるテイクアウト方式に注目。経済的な支援にとどまらず、交流の場を提供することをモットーに掲げた食堂から、大きくかじを切った。同年6月にテイクアウトを始めると、「待ってたよ」と再開を喜ぶ声を多くもらった。利用者の数も一気に増え、程なくして準備する弁当を2倍の200食にした。

 利用者が増えた理由について、「コロナで困窮化が進んだことは間違いない」と茅野さん。会場での滞在時間が減ったことで、「生活弱者と見られる“恐れ”が軽減され、周囲の目を気にせず来られるようになったのでは」と推測する。

 高齢者の利用も増えた。一部希望者には弁当を配達、声かけを通して地域の見守り活動の役割も担う。高齢者が子どもに郷土菓子作りを教えるイベントを開くなど活動の幅は広がった。

 悩みは今後の運営方式だ。コロナとの共存生活が落ち着きを取り戻しつつあり、会食方式に戻すことも検討している。とはいえ3月11日に利用者にアンケート調査したところ、約9割がテイクアウトを希望し、会食は4%。茅野代表は「試行錯誤しながら、地域交流の場としての食堂スタイルを模索したい」と語る。

 運営方法など一定の要件を満たして県の制度に登録される子ども食堂は、県内で感染者が初確認された20年3月末時点で43団体。コロナ禍をへて23年2月末で、3倍近い117団体に増えた。

 県内の子ども食堂が集う「かごしまこども食堂・地域食堂ネットワーク」(鹿児島市)の園田愛美代表(42)は「支援が必要だったり、交流を求めたりする人が集まるようになり、一気に認知が進んだ」とコロナ下の3年を振り返る。活動形態は会食方式やテイクアウト方式、運営形態は多世代型、交流体験併用型など地域課題に根ざした子ども食堂が各地に広がっている。

 「食材提供にとどまらず、民生委員や医療関係者など、多くの協力が得られるようになった。コロナ禍が落ち着いても、子ども食堂は利用者のよりどころであり続ける」と話した。

(連載「かごしまコロナ 揺れた3年」より)

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