一時は活動休止のJ3チームがYouTube登録1.1万人超の注目度に…コロナ禍「サポーター愛」深めた仕掛けとは

 2023/04/02 08:30
大歓声で鹿児島ユナイテッドFCを後押しするサポーター=鹿児島市の白波スタジアム
大歓声で鹿児島ユナイテッドFCを後押しするサポーター=鹿児島市の白波スタジアム
 3月4日に開幕戦を迎えたサッカーJ3の鹿児島ユナイテッド。制限されてきた声出し応援は今季から全席で解禁され、鹿児島市の白波スタジアムには3年ぶりに大歓声が戻った。26日の第4節・相模原戦は曇天の中、4000人以上が駆け付けた。開幕戦から足を運んでいる木之下祥平さん(29)は「毎回ジャンプしながら大声を出すので、体のいろんな所が筋肉痛になる。声を出すことでスタンドに一体感が生まれる」と笑う。

 ユニホーム姿のサポーターはメガホンやタオルを持ってピッチに視線を注ぎ、応援団は大漁旗のようなフラッグを振り続ける。2-1で勝利し、スタンドは選手と一体となって沸いた。応援団体「FEUS」のメンバー神脇摩侑さん(30)は「声を出して応援する人たちは、これまでより一層楽しんでいるように見える」とほおを緩める。

 新型コロナウイルスのまん延はサポーターの楽しみを奪った。2020年のJ3開幕は7月と、約4カ月も遅れた。緊急事態宣言を受けて、チームが活動休止をした時期もある。そんな中、クラブは「地元のプロチームとしてできることをやろう」と、交流サイト(SNS)での情報発信に力を入れた。

 コロナ前は、試合の結果だけを載せていた動画投稿サイト「YouTube」に、選手を知ってもらうための動画を投稿。若者に人気の写真投稿アプリ「インスタグラム」では、自宅での料理、掃除など「おうち時間」の過ごし方やトレーニングの配信も試みた。

 約600人だったYouTube登録者数は1万1000人を超え、インスタグラムは約7000人から倍増した。鹿児島ユナイテッド運営部部長湯脇健一郎さん(48)は「注目度の高まりを感じる。今季も、観客が減っていないのはありがたい」と感謝する。

 ファンにとって、観戦前の腹ごしらえも楽しみの一つだ。白波スタジアムの入場ゲート近くでは、20店舗ほどの飲食店が並ぶ「ユナマルシェ」が人気を集めている。2019年は、老若男女が夏祭りの露店のように長い行列をつくり、現金と商品を手渡しする姿が多かった。

 「コロナ禍でも何かできるはず。安心できる環境をつくりたい」とユナマルシェ担当の川島一浩さん(27)。クラブは、買い物をする際にスマートフォンを使った新しいシステムを導入した。食べたい店のメニューを事前に予約し、クレジットカードを使って決済。密集を回避できる上に、待ち時間の短縮にも成功した。さつま揚げや唐揚げをよく購入する大田海音さん(23)は「他県では40分も待ったことがある。食べたい時間に待たずに買えるのは便利」と喜ぶ。

 ホーム3試合を終え、白波スタジアムの平均観客数は5112人。「FEUS」の神脇さんは、あらためてユナイテッド愛を口にする。「コロナ禍も今も、ユナイテッドは家族と同じ。死ぬまで応援する覚悟はある」

(連載「かごしまコロナ 揺れた3年」より=おわり)