二足歩行、巨大なあごと鋭い歯で君臨、体長10メートルに迫る巨体…ティラノサウルス科の恐竜だって「歯ぎしり」していた? 長さ8センチを超える国内最大級の歯化石に残る跡

 2023/04/10 11:05
石川県白山市で見つけた、国内最大級の獣脚類の歯化石。長さ8センチ超
石川県白山市で見つけた、国内最大級の獣脚類の歯化石。長さ8センチ超
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん

 アイヌ語で神を指すカムイは、捕食者の頂点に立つヒグマの姿で現れることがあったようです。恐竜時代、捕食者の王様格はティラノサウルスなどでよく知られる「獣脚類」です。二足歩行で植物食恐竜を襲い、巨大なあごと鋭い歯で君臨する姿は、神や王の名にふさわしかったことでしょう。

 日本国内で化石が発見され、学名が付けられた肉食の獣脚類はフクイラプトル(福井県)やフクイベナートル(同)などがいます。体長は、フクイラプトルで4メートルほどでした。

 さらに大きな獣脚類がいたことが、各地で発見された「歯化石」から推察できます。長さ8センチを超える国内最大級の二つの事例を紹介しましょう。

 1例目は2008年、私が石川県白山市の河原に転がっていた石の中から発見しました。時代は白亜紀前期(約1億3千万年前)、種類は不明ですが、先端に歯ぎしりの跡が残り、すり減り具合で左の上あごに生えていたことが分かりました。

 もう1例は、長崎市の三ツ瀬層で14年度以降に3点発掘されました。時代は白亜紀後期(約8千万年前)で、いずれもティラノサウルス科とみられています。

 同じ時代の似た標本と比較すると、いずれも体長10メートルに迫る巨体だったことが分かります。

 水俣湾に浮かぶ熊本県の御所浦島でも1997年、歯化石が発見されています。時代は約1億年前で、先端が欠けて正確な大きさは分からないものの、復元すれば国内最大級の候補の一つと思われます。

 同じ御所浦層群の地層が続く鹿児島県長島町の獅子島にも巨大な獣脚類が眠っているはず、と私はにらんでいます。

【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。

(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)

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