法廷内の傍聴メモは紙とペン限定!…記者は思った。「デジタル全盛時代。なぜパソコン入力じゃ駄目なの?」 調べると…PCメモを認める地裁があった

 2023/04/30 22:08
紙のノートとパソコン(本文と写真は関係ありません)
紙のノートとパソコン(本文と写真は関係ありません)
 被告人が質問に答えると、さらさらとペンを走らせる音が法廷内に響く。鹿児島地裁(鹿児島市)の傍聴席での日常だ。裁判傍聴では紙のノートとペンによるメモが常識とされ、デジタル全盛時代なのにパソコンを持ち込んでメモ入力する姿は見られない。なぜか。調べると、パソコン使用を巡り各地裁で「使える」「使えない」の判断が分かれているようだ。

 鹿児島地裁によると、傍聴席でのルールに関しては、法廷警察権に基づき事件ごとの裁判長が判断するとした上で、「録音や撮影防止の観点」から、パソコンなどの電子機器の持ち込みは原則認めていない。鹿児島以外の九州6県の地裁に聞いても、同様に裁判長の判断に委ねられ、傍聴席でパソコンが使われる例はないという。

 一方、那覇地裁では実際にパソコンを持ち込んでメモすることを認める裁判長がおり、報道関係者を中心に運用中。地元地方紙・琉球新報の記者は「刑事事件のやり取りは早口なので、手書きより早くメモできて助かっている。なぜ他の地裁で認められないのか」と首をかしげる。

 裁判は原則公開され、電子機器による撮影・録音は禁止されているが、メモは認められている。元々はメモも「原則禁止」だったが、1985年、アメリカ人弁護士のローレンス・レペタ氏が「メモ禁止は知る権利を保障する憲法に違反する」として国を提訴。地裁・高裁で退けられたものの、89年の最高裁判決は「裁判を認識・記憶するためのものに限り、理由なく妨げられてはならない」との判断を示し、初めてメモを認めた。

 パソコンでのメモに関しては2017年、名古屋市の金岡繁裕弁護士が、傍聴席で使用した際に退廷を求められたことを不服とし国を提訴。だが、「録音・録画の可能性を排除できない。打鍵音が妨げになる」などとして棄却された。

 金岡弁護士は「紙のノートは良くて、なぜパソコンが駄目なのか。届け出制にするなどし、事件関係者や報道陣といった必要な人が使用できるようにすべきだ」と主張する。

 撮影・録音が禁止されている司法関係の記者会見でも、大半がパソコンでのメモを認めている。「開かれた身近な司法」を目指し司法制度改革がスタートして20年超。被告や被害者のプライバシーを守った上で、柔軟な対応を期待したい。