今度は「北ふ頭」? 混乱続く鹿児島市サッカースタジアム構想に新たな動き

 2023/05/05 08:30
鹿児島県が新総合体育館の整備を計画しているドルフィンポート跡地(中央)=鹿児島市(本社チャーター機から撮影)
鹿児島県が新総合体育館の整備を計画しているドルフィンポート跡地(中央)=鹿児島市(本社チャーター機から撮影)
 鹿児島市が鹿児島港本港区エリアで検討する多機能複合型サッカースタジアムの潮目が変わってきた。ドルフィンポート(DP)跡地と住吉町15番街区の2候補地に加え、市議会で「北ふ頭」が浮上したためだ。エリアの全体像を検討する県の利活用検討委員会は8月から区域ごとの機能を絞り込み、年度内の決定を目指す。タイムリミットが迫る中、市当局の対応が注目される。

 4月11日の市議会特別委員会。委員の「市が本港区内で他の配置案を残していると捉えていいか」との質問に、当局が「申し上げられない」と回答を拒むと委員会はざわついた。

 伏線は3月定例会での下鶴隆央市長の答弁にあった。本港区エリアの「2カ所で検討」を「2カ所を含む」に突如言い回しを変えたからだ。特別委の委員は他にも候補地があると受け止め、「北ふ頭しか考えられない」との指摘が相次いだ。

 本命とされてきたDP跡地を巡っては、県検討委が県の新総合体育館整備を前提に議論している。DP跡に隣接するウオーターフロントパーク(緑地)は残す方針で、緑地の大半をつぶすスタジアム構想は締め出しを食らっている格好だ。

 県は新体育館を2029年度にもオープンする工程を発表。塩田康一知事は「着実に予定通り進んでいる」と話す。住吉町については「協議の余地はある」とするが、市にとっては採算性などがネックになり、ハードルは高い。

 北ふ頭が浮上する背景には、2候補地が厳しいとの見立てに加え、かごしま水族館を含めて11.1ヘクタールの敷地の広さがある。現状は喜界航路のみが就航し、旅客ターミナルや貨物上屋などの利用も一部にとどまる。

 下鶴市長は「市議のアイデアの一つ」と多くを語らない。市議の間に「北ふ頭を表明するタイミングを見計らっているのでは」との見方がある。スタジアムの詳細についても「(学識経験者や経済団体などで立ち上げる)協議会で今後議論し、候補地決定後に具体的な絵を示す」としており、進んでいない。

 これまで3回あった県検討委は本港区再開発に向けたフリートークの要素が強かった。8月からの集約作業を控え、下鶴市長は「議論を見ながら、市の思いを伝える」と述べる。

 だが、整備に前向きな市議の一人は「候補地が他にあるなら、市は早期に提案・説明すべきだ」と強調する。県検討委の議論が進み、時間切れになるのを懸念。「このままではスタジアムが入る余地がなくなる」と気をもんだ。