【令和のPTAを考える~中~】役員を経験して分かった「意義」と「課題」 30代に垣間見えた「特異」な傾向とは?

 2023/05/17 19:30
 南日本新聞社編集局LINEアカウントを使って実施したPTAに関する意識調査。役員選出を巡っては、「まるでお通夜」「壮絶なじゃんけん大会」など、リアルな不満や不安が続出しました。一方で、前回記事の「PTAは必要か、不要か」の議論では、「必要派」が過半数を占めました。この意識の「ずれ」は、どこに原因があるのでしょうか。今回は、学級委員や役員の経験談を含めて、さらに意識を深掘りします。

■8割超が委員や役員を経験



 アンケート結果によると、83.6%が一度は委員や役員を経験していると回答しました。最も多かったのは「5~9年」の16.8%。次いで「なし」が16.4%、「1年」「2年」の16.0%、「3年」の14.8%。10年以上務めた人も9.6%に達しました。

 「子ども1人につき小学校6年間で2回役員を務める」など、ポイント制を導入する学校が多いことを裏付けるとともに、特定の保護者が長年、役員を担っている実態も見て取れました。

 それでは、委員や役員の経験は「有意義」なものだったのでしょうか。

■経験者の54.1%が「有意義だった」

 「委員や役員経験は有意義だったか」を問うと、賛否が二分した「必要か、不要か」への回答とは一転、全体では「有意義派」が54.1%と半数を超え、「有意義ではなかった」とする23.5%を大きく上回りました。特に、5年以上の経験者では「有意義」とする回答が7割を超えました。

 PTAを卒業した年配者からは、卒業後も友人付き合いできるメリットを強調する声がありました。

・県外から鹿児島に嫁いで、知り合いがいなかったので、PTAの役員を引き受けることでたくさんの友達ができました(60代女性)

・人選で苦労したが、一緒に取り組んでくれる親がいることも痛感した。数人ではあるが、卒業以降も付き合いが継続している(60代男性)

■若い世代に多い「両立」への苦悩




 二つのグラフを見比べると、共通するのは、若い世代ほど、PTAに対してネガティブな感情を持っている点です。特に30代では「有意義ではなかった」とする回答が47.4%にのぼり、全世代で唯一、「有意義だった」を上回りました。

・会議に出席しても、行事に参加しても、すべて無償。働いても税金を取られ、物価は上がり、PTA活動で時間まで奪われてつらいです(30代女性)

・平日に学校へ出向くことが負担。パートの仕事を休まなければならない(40代女性)

 時間的な「仕事との両立」だけでなく、PTA活動によってパートタイムの仕事を休まざるを得ないことによる、金銭的な「生活との両立」への苦悩が浮かびます。

■30代に顕著な「二極化」




 委員や役員経験者に、「もう一度やりたいか」も問いました。全体では、否定派が59.8%と過半数に達し、「ぜひやりたい」は9.1%と1割を切る結果でした。役員選出をめぐるゴタゴタや、仕事や生活との両立などが、ネガティブな回答につながっていると思われます。

 若い世代ほどPTAを「苦痛」と感じている一方で、「委員や役員をもう一度やりたいか」という問いでは、30代の回答に「特異」な現象が見られました。

 「ぜひやりたい」を選択した方は15.8%にのぼり、全世代を通して最多の比率でした。「PTAは必要か」「役員経験は有意義だったか」という質問では、最も否定的な反応を示した30代の中に、より積極的にPTAや学校運営に関わりたい層がいることを浮き彫りにしました。

 ただ、逆に「絶対にやりたくない」も最多の36.8%でした。「やってもいい」「できればやりたくない」という穏やかな回答ではなく、両極に二分化される「2極化」の進行をうかがわせる結果となりました。

・役員の押し付け合いをしたくない(30代女性)    

・じゃんけんで負けてPTA三役をしたが、負担でしかない。じゃんけんで決めるくらいだから、誰でもできる。嫌々、役員にさせられて、良いPTA運営ができるはずがない(30代男性)

・子どものためのPTAなのに、なぜ、夜間に子どもを家に残して集まらないといけないのか理解できない。コロナ禍でPTA行事がなくなっても誰も困らなかった。むしろ子どもとの時間がつくれた。本当に要らない(30代女性)

・ひとり親世帯の増加や人口減少、働き方の多様化などの中で、従来のPTA制度を保つのは無理が出ている(30代女性)

 否定的な意見が多いなか、30~40代の世代に、こうした意見もありました。

・規模の小さな学校は、保護者より教頭先生をはじめとする教職員が行事などの準備を担っている。もう少し、保護者も含めた全員で楽にできるようにできたらいい(40代女性)

・学校運営を先生たちだけでこなすのはしんどい(30代男性)

・学校の先生だけに教育を任せられる世の中ではなくなったと思います。先生は社会経験が少なく、コミュニケーション力や、勉強以外の人間性の指導力の無い方が増えたと感じています。特に、学校区に住まない「サラリーマン先生」が増えた。昔は放課後や休日も一緒に遊び、育て、語れる人が先生でした。その中で、任せられない現状をPTA(保護者)が補完しなくてはと感じています(40代男性)

■学校は、先生は、PTAを必要としているのか

 今回のアンケートは保護者からの回答が大多数を占めました。その中で、学校側がPTAの必要性をどこに、何に感じているのか知りたいという声も多くありました。

・学校が本当にPTAを必要としているのか、疑問。必要だとしたら、人的補助? 資金援助? そして、それは、従来のPTA組織である必要があるのか(50代女性)

・親の負担軽減のためPTAはなくしていいと思うが、先生方の意見はどうだろう(60代女性)

・学校側が保護者にやってほしいことを選別してほしい(40代女性)

・学校側が必要と思う仕事を保護者に任せる(30代女性)

■持続可能なPTAとは…

 アンケート回答から、現在のPTAが抱えるさまざまな課題が浮かび上がりました。「令和のPTAを考える」シリーズ最終回は、学校にとって、どんなサポートが必要なのか、その組織はどんな姿がいいのか、を考えてみたいと思います。



 【アンケート手法と回答】南日本新聞社編集局LINEアカウントを使って4月21~23日に実施した。設問は「PTAは必要か、不必要か」「PTAの学級委員や役員の経験年数は」「委員や役員をやって有意義だったか」など選択式9問と、「委員や役員選出の際の体験談」「PTAは今後どうあってほしいか」など自由記述5問。250人から回答がありました。