まだまだタイム更新中! 32歳知的障害スイマー、狙うは世界一 「地元で日本一に」今秋の全国大会で恩返しも誓う

 2023/05/19 12:15
自由形の練習に励む池上寛朗さん=出水市市民プール
自由形の練習に励む池上寛朗さん=出水市市民プール
 知的障害のスイマーとして世界大会に挑み、今年秋に鹿児島県で開かれる全国障害者スポーツ大会(障スポ)で飛躍を誓う男性がいる。出水市の会社員・池上寛朗さん(32)。障スポでは日本一になったことがなく「まずは21日の県大会で好成績を収めて弾みを付けたい」と意気込む。

 水泳は兄の影響で3歳の時に始めた。学習障害で計算や長文を読むのが苦手だが、負けず嫌いで力を付けた。障スポは出水養護学校(現・出水特別支援学校)高等部2年時、秋田大会(2007年)に初出場。これまで4大会で50メートル自由形や25メートル背泳ぎなど計6回、2位に輝いた。

 知的障害者アスリートの世界大会「スペシャルオリンピックス」でも活躍する。4年前、アラブ首長国連邦(UAE)であった大会では100メートル背泳ぎ、200メートルリレーのアンカーとして3位。6月17日に始まるドイツ・ベルリン大会の日本代表にも選ばれ、100メートル個人メドレーと自由形、200メートルリレーで世界一を狙う。

 地元のプロテリアル金属鹿児島工場の精密機械製造加工品グループで働く。練習は休日や日勤後に出水市のほか阿久根市、鹿児島市で週2、3回、1日3000~6000メートルを泳ぐ。持ち味はスタートダッシュで得意種目は背泳ぎだが「苦手を克服したい」と大会では他種目にも挑戦する。課題は後半の息切れ。計5人のコーチから助言され、スタミナ強化を図る。週1回の体幹トレーニングも欠かさない。

 チームプレーに憧れ、20代前半は大好きだったバスケットボールにも励んだ。だが、正選手になれず悔しい思いをした。「力を発揮できる競泳で上を目指そう」と一本に絞った。

 ベルリン大会で競泳ヘッドコーチを務める姶良市の下田昇吾さん(28)=JAあいら=は、池上さんを指導して10年。「泳ぎがダイナミックで力強い。一生懸命でタイムが伸びている。一緒に練習する子どもたちの面倒見もよく、教えるのがうまい」と評価する。

 入江陵介や瀬戸大也ら世界トップレベルの泳ぎも見て研究する。「長く活躍する入江選手が目標」と目を輝かせ、「市民やコーチ、職場、家族と多くの人に支えられてきた。鹿児島である障スポは『金を取ったよ』とみんなに報告して恩返ししたい」と闘志を燃やす。