犯人はイノシシ…のり面に掘られた穴から県道に落石、1カ月たっても通行規制続く

 2023/05/20 11:33
イノシシの食害による落石のため通行規制が続く県道鹿児島吉田線=19日午前8時半ごろ、鹿児島市吉野町
イノシシの食害による落石のため通行規制が続く県道鹿児島吉田線=19日午前8時半ごろ、鹿児島市吉野町
 災害時の緊急輸送道路である鹿児島市吉野町の滝之神浄水場近くの県道鹿児島吉田線で、イノシシが食べ物を探すためにのり面に穴を掘った影響で落石が発生し、1カ月以上通行規制が続いている。県道路維持課によると、イノシシによる規制は珍しい。梅雨や台風の出水期が近づく中、住民からは「安心して通れるようにしてほしい」と早期復旧を求める声が上がっている。

 通行規制は4月9日からで区間は約200メートル。市街地方向に向かう2車線のうち、のり面側にある1車線が終日通行できなくなっている。同県道は吉野、吉田地区と市街地を結ぶ主要道路で、災害時に救助や物資輸送の車両が利用する緊急輸送道路にも指定されている。

 県によると、落石は最大で直径約30センチを確認。のり面には土砂崩れ防止のため、補強材のモルタルが格子状に設置されているが、草が生えるようにしていた内側の部分が複数箇所でイノシシによって掘り返されていた。その影響で、土の中にあった石が落下したとみられる。現場では猟師が仕掛けたわなでこれまで2匹が捕らえられている。

 県は近く、のり面の補修工事を着工する。今回は食害の多かった約20メートル四方の箇所について、イノシシが穴を掘れないように全体をモルタルで覆う予定。事業費は約1600万円。モルタルが格子状に設置されている部分は全体で長さ約200メートルあり、ほかの部分は状況を見ていくという。

 現場近くは許可がなければ狩猟できない県指定の鳥獣保護区。地元の猟師によると、イノシシは以前からいたが、人が山に入らなくなっていく中で、最近は道路近くまで姿を現すようになってきている。

 吉野地区の住民有志で組織する「住みよい吉野をつくる会」は15日、早期の工事完了を求める要望書を県に提出した。東郷洋会長(79)は「原因がイノシシと聞いて驚いた。大きな災害につながらないか心配。早く工事を終わらせてほしい」と話している。