「香港のように自由がなくなったら…」 日本人と結婚した台湾人女性 選挙のたびに帰国し「一つの中国」に抗う
2023/05/22 21:17

中国人観光客をもてなす山田賢一さん、怡如さん夫妻(右)=3月31日、鹿児島市のマリンポートかごしま
「やっぱり対面はいい」。鹿児島市小松原2丁目の木工販売、山田賢一さん(57)と台湾出身の妻・怡如さん(57)は流ちょうな中国語で接客し、交流を喜んだ。
賢一さんは1984年、台湾と取引していた父の勧めで台湾の大学に留学。怡如さんと出会った。帰国後、取引先を中国にも広げ鹿児島との行き来を続ける。
中国の経済成長は行くたびに驚く。ただ、「怖さ」を感じることも増えた。中国で2010年に施行された国防動員法は有事の際、資産や会社、人の徴用を可能にした。賢一さんが経営に関わっていた現地の工場は、リスク回避のため業務委託の形態に変えた。
「台湾も香港のように自由がなくなる恐れを強く感じる」。怡如さんら県内の出身者は選挙の度に台湾に帰る。中国が唱える「一つの中国」を拒む党派を応援するためだ。「台湾有事を日本が考えてくれるのはうれしい」
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台湾有事は日本有事-。政治家や専門家の主張が強まったのは、コロナが中国で初確認され、世界で感染が広がった20年ごろからだ。
「中国というだけで露骨に嫌がる人が目立ち始めた」。日中友好協会員で行政書士の鎌田敬さん(70)=鹿児島市荒田1丁目=は話す。
大学生時代に知り合った中国人留学生は、共産党幹部になったり、経済界で出世した人も多い。00年代に共産党ナンバー2や駐日大使が鹿児島を訪れた際は案内に携わった。知事らと懇談するなど、期待感がより強かったと振り返る。
鎌田さんは今、抑止名目で防衛力の増強を進める日本の意図が誤認されるのが気がかりという。「日中の経済的な結びつきは衰えていない。お互いの国民に攻撃するつもりは一切ないのに、互いに『攻撃される』と思っている」
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「日本の軍事大国化が疑われている」。県内の複数の中国人は口をそろえる。中国では先の大戦を侵略として強調するドラマや映画が多く、日本への疑念は根強いという。習近平政権については「経済成長し人気もあるが、怖さもある」と話し、匿名を念押しした。
県日中友好協会会長の海江田順三郎さん(95)=同市武2丁目=は春以降、来県した中国領事ら関係者に「日本は平和を望んでいる」と繰り返し伝えた。
17歳で鹿児島大空襲、終戦を経験し「戦争は国民が支持して起こる」と強調する。「顔の見えなさは疑心暗鬼を生む。民間から平和的な解決策を訴え続けるのが戦争の歯止めになる」と話した。
(連載「転換期の空気 安保激変@かごしま」3回目より)
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