アクリル板どこいった? 産廃業者は「処分依頼増えていない」 飲食店は「とりあえず…」

 2023/05/22 21:00
飲食店の倉庫で保管されているアクリル板=12日、鹿児島市荒田2丁目
飲食店の倉庫で保管されているアクリル板=12日、鹿児島市荒田2丁目
 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられ、鹿児島県内の事業者は飛沫(ひまつ)感染対策に使われてきたアクリル板の利用法や処分に頭を悩ませている。感染拡大による“再登板”に備えて処分を保留している事業者が多いようだ。加工して再利用するケースもある。

 「何があるか分からないから、取りあえず保管している」。鹿児島市内で居酒屋や焼き肉店7店を運営するウィンズの奥由紀子マネージャー(61)が指さした先には、10枚ほどのアクリル板が消毒用のアルコールとともに倉庫の片隅に置かれていた。

 法的な位置付けが変わったとはいえ、ウイルス自体が消えたわけではない。今も感染への不安を感じる来店客がいるほか、今後「第9波」が訪れるとの懸念もある。「“もしも”の備えとしてしばらくは捨てられない」

 行政の現場はどうか。県庁では、感染拡大期に各職員の座席の間に設置されたアクリル板は残っている課が多い。寺地美紀子総務事務センター長は「基本的な感染対策は、状況によって個人や各所属で判断するように伝えている」。一斉に撤去したり、1カ所にまとめて保管・処分したりする計画はないとした。

 市内の産業廃棄物処理業者は「回収や処分の依頼が増えたという印象はまだない」と話す。別の業者も処分依頼はないとし「保管しているか、設置を続けているところが多いのでは」と推測する。

 別の用途に生かす試みもある。飲食店や宴会場、フロントに設置していた城山ホテル鹿児島(同市)は一部を加工し、開業60周年記念で従業員が着用するオリジナルバッジに仕立てた。

 SDGs推進室の安川あかね室長(48)は「破損したり傷ついたりして使えなくなったアクリル板を、廃棄せず有効利用したいとの現場スタッフの思いで製作した」と説明する。

 地元のかごしま環境未来館にも提供。同館は賛助会員を紹介するプレートを作製し、3月末に展示スペースに設置した。城山ホテルでは、ほかにも活用のアイデアを社員から募っている。

 バッジ、プレートともに加工を手がけたのは、看板製作などのブンカ巧芸社(同市)だ。コロナ下はアクリル板を販売していた。今後は看板のほか、飲食店のテーブル番号を記載するプレートなどに加工できるとして、リサイクル需要に対応していく。

 営業課の榎園未佳課長代理(32)は「SDGs(持続可能な開発目標)への関心の高まりもあり、販売先からは『処分するよりもリサイクルしたい』との相談が多く寄せられている」と話した。