いつの間にか大工に転職したおやじ。でも、我が家はボロだった。ある日、天井から猫が降ってきた―サンシャイン池崎

 2023/06/04 11:00
 僕のおやじは自営のタバコ工場で、タバコを吸い、工場で乾燥させているタバコの葉に引火させ、メラゾーマ(*1)を起こし工場を2度全焼させた大魔道士(*2)だ。

 その後、おやじは転職して大工になった。建物を消滅させた男が、今度は建物を作りだす男になったのだ。僕は母におやじがどうやって大工になったか聞いた事がある。母が言うには、修行の旅に出てレベルを上げ、大工への転職に成功したらしい。不思議だ。僕の記憶が正しければ、おやじが家にいなかった事など一日たりともなかった。いつの間にか「池崎組」という、爆裂にイカつい名前の大工の会社をつくり社長になっていた。いつ修行してたんだよ。もしかしたら僕が知らないだけで桜島あたりにダーマ神殿(*3)があったのかもしれない。

 疑問は残るがおやじは大工になった。会社はうまくいっている時期もあり、おやじが仕切って建てたビルを見せてもらった事もあった。子どもながらにスゲーと思っていたが、同時に「なんでうちは大工なのに家がこんなにボロいんだろう?」と不思議だった。前回も話したがうちは空前絶後のボロ家だ。本気を出せば小学生の夏休みの自由研究で作れるぐらいのボロさだった。友達にボロ家を見せるのが恥ずかしい時期もあった。小学校からの帰り道、「池崎の家で遊ぼうぜ!」と話が出ると「いいよ!」と言いつつも、家バレを恐れ、偽りの帰り道を通り、その途中で友達をまくという奇行に走り度々「池崎神隠し事件」を起こしていた。

 勇気を出して「家を建て直してくれ!」とお願いした事もあった。しかし、おやじは家は住めれば良いという考えで、雨漏りしようが、隙間風が吹こうがお構い無し。どれだけ頼んでも直してくれなかった。

 そんなある日、事件は起こる。家族4人、川の字で寝ている時の事である。隙間だらけの屋根裏に猫が2匹入ってきてけんかを始めたのだ。激しいバトルで、池崎家の天井はキシキシときしみ始め、ホコリも落ちてくる。ニャー!ウーー!といううなり声と、ドタドタドタと走り回る音。あまりのうるささにたまらずおやじの目が覚めた。天井に向かって「うるせが! 静かにせんか」と叫んだ。すると、猫2匹の重さとおやじの音圧で耐えきれなかったのか天井が抜け、おやじの顔面に板と猫2匹がけんかしながら降ってきて直撃したのだ。雨漏りならぬ、猫漏りだ。「なんよ! こいわ!」。松田優作ばりのおやじの声が暗闇に響き渡った。

 次の日、朝早くから顔中にばんそうこうを貼ったおやじが、家中の隙間を修理していた。猫ありがとう。続く。

*1=相手に大きなダメージを与える攻撃呪文。
*2=魔法使い。
*3=転職がかなう場所。
 いずれも日本を代表するロールプレーイングゲーム「ドラゴンクエスト」を参照のこと!

 サンシャイン池崎(さんしゃいん・いけざき) 1981年、鹿児島県鹿屋市生まれ。お笑い芸人。テレビ東京「おはスタ」、NHKラジオ「小学生の基礎英語」出演中。日本テレビ系「嗚呼!みんなの動物園」では本名の池崎慧として、預かり猫のボランティアに取り組む。著書に「空前絶後の保護猫ライフ! 池崎の家編」(宝島社)、「クック池崎のジャスティス!駄菓子クッ王‼みんなでウマシャイーン‼編」原案(小学館)。

(連載 サンシャイン池崎の「イケザキクエスト第2話」より)