「戦争の悲惨さ、平和の尊さ伝えたい…」 知覧特攻平和会館に初の女性語り部誕生

 2023/05/28 21:00
語り部デビューに向けて研修に余念のない松山尚子さん=25日、南九州市の知覧特攻平和会館
語り部デビューに向けて研修に余念のない松山尚子さん=25日、南九州市の知覧特攻平和会館
 鹿児島県南九州市の知覧特攻平和会館の新しい語り部に松山尚子さん(48)が決まり、デビューに向けた研修に励んでいる。初の女性語り部で、60~80代が現役を占める中で大幅な若返り。関係者は「新たな視点から特攻の歴史を語ってほしい」と期待している。

 同会館では常勤4人の語り部が、求めに応じて特攻の歴史や展示物に関して講話をする。今春、70代の1人が非常勤に移ることになり、後任を探していた。

 松山さんは知覧在住の元図書館司書。読み聞かせ活動などで戦争に関する書籍に触れる機会が多く、関心を深めた。数年前から大学院に在籍し、公的機関での歴史的資料の保存などについて研究する中で、知覧特攻平和会館を独自に調査していた。そうした姿が関係者の目に止まり、語り部を打診された。研究を進める中で平和について発信する必要性を感じ、「自ら行動してみよう」と引き受けたという。

 現在は、展示資料を一つ一つ調べて講話の構成を練りつつ、先輩の語り部に話し方の手ほどきを受けている。指導役の桑代照明さん(66)は「隊員の母親が寄託したへその緒の話を盛り込むなど、われわれにない視点がある」と期待する。

 松山さんは「会館の膨大な資料を精査し肌で感じた、戦争の悲惨さ平和の尊さを伝えていきたい」と話している。