街が沈んだ…わずか1日で1カ月超す豪雨 異例ずくめの1993年夏 梅雨明けなし、戦後最大級の台風上陸 死者・不明者121人

 2023/05/31 08:28
土砂にのみ込まれたトラックやワンボックスカー=1993年8月7日、鹿児島市吉野町三船付近の国道10号
土砂にのみ込まれたトラックやワンボックスカー=1993年8月7日、鹿児島市吉野町三船付近の国道10号
 未曽有の豪雨が鹿児島市周辺を襲った1993(平成5)年「8・6水害」から30年を迎える。この年は風水害が相次ぎ、県内の死者・行方不明者は121人に上った。7月の降水量は平年の3.5倍。8月6日は1日で1カ月分を超えた。9月は戦後最大級の台風が上陸。鹿児島地方気象台が、梅雨明けがはっきりしないと結論を出した異例の夏だった。

 93年の九州南部は5月21日に梅雨入りが発表された。6月中旬から7月上旬まで梅雨前線が停滞。連日の大雨で災害が多発し9人の犠牲者を出した。

 気象台は同9日、九州南部の梅雨明けを発表。しかし、前線が再び南下し長雨が続いた。鹿児島の7月降水量は1054.5ミリと平年の3.5倍に達した。

 8月1日、霧島市など県央地区を豪雨が襲った。この「8.1豪雨」では23人の死者を出した。

 復旧もままならない中、8・6水害を迎えた。鹿児島市周辺で土砂崩れや土石流が相次ぎ、甲突川や稲荷川、新川からあふれた濁流が天文館をはじめ市街地を水浸しにした。降水量は259.5ミリを記録し、8月平年値を1日で超えた。死者・行方不明者は49人に及んだ。

 気象台は8月31日、梅雨明けは特定できないと異例の修正を出した。

 9月は戦後最大級の台風13号が薩摩半島南部に上陸し県本土を縦断。南さつま市金峰や南九州市川辺で計33人が犠牲となった。

 当時の気象台予報課長、前田一郎さん(75)は「普通の夏がなかった夏だった」と振り返る。気象庁にいても1度経験するかしないかの災害が複数回発生した。



 30年前の水害の体験を募集します。6月末までに400字程度にまとめてお送りください。写真などの情報もお寄せください。〒890-8603(住所不要)南日本新聞社報道部「防災取材班」、メール=shakai@373news.com ファクス=099(256)1630