牛のげっぷ、海藻食べてメタン抑制 温暖化防止と藻場再生へ 山川町漁協が「カギケノリ」プロジェクト 5年以内の飼料化目指す

 2023/05/31 21:02
山川沿岸でカギケノリのサンプルを採取するアルヌールの社員(同社提供)
山川沿岸でカギケノリのサンプルを採取するアルヌールの社員(同社提供)
 牛のげっぷから排出される温室効果ガスのメタンを減らそうと、鹿児島県指宿市の山川町漁協は海藻のカギケノリの養殖プロジェクトを立ち上げた。飼料に混ぜると発生が減ることが海外で確認されており、メタン抑制に加え、藻場の再生にもつながると期待される。

 カギケノリは紅藻類という海藻の一種。日本を含む太平洋熱帯海域に生息し、山川の沿岸でも繁殖が確認されている。食用の流通がなく、生態も不明な点が多いため、国内では先行する養殖研究はなかった。

 オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)が飼料に少量混ぜるだけで、メタンの発生を80%以上削減できるとの研究を発表。含まれる化合物が消化器官で特定の酵素の働きを抑え、メタンの発生を防ぐという。

 養殖プロジェクトは、山川町漁協と、微細藻類の培養技術を開発するアルヌール(東京都)が共同で実施する。きっかけは昨年10月、同漁協の川畑友和さん(44)がユーチューブで発信した藻場再生の動画。映っていたカギケノリを見たアルヌール社員が養殖への応用を持ちかけた。

 すぐにプロジェクトを立ち上げ、これまでにカギケノリの生態やライフサイクルのデータ収集を終えた。現在は研究機関の協力を得てメタン抑制効果を立証中。養殖技術の確立に取り組み、5年以内の飼料化を目指す。

 川畑さんは「海水温の上昇で取れる魚も変わってしまっている。養殖を実現して温暖化を抑制することで豊かな海を後世に残したい」と話している。