九州の国立大で58年ぶり全日本大学野球選手権へ 初出場の鹿屋体大、躍進の秘密は「可視化」にあり

 2023/06/02 15:58
動作解析のために投球をする鹿屋体大の投手=同大
動作解析のために投球をする鹿屋体大の投手=同大
 鹿児島県鹿屋市の鹿屋体大野球部は、九州地区大学野球選手権南部九州ブロック大会(19~21日・沖縄県)で優勝し、初めて全日本大学選手権(6月5~11日・東京)に出場する。九州の国立大学が出場するのは58年ぶりとなる。チームは最先端機器を使ってデータを計測し、能力を「可視化」して練習した。躍進の背景を探った。

 宮崎、熊本、沖縄県の代表と対戦し、リーグ1位が全国切符を得る南部九州ブロック大会決勝リーグ。鹿屋体大は、危なげない試合運びで3戦3勝した。

 初戦の宮崎産経大戦は、5回に5安打を集中し一挙7点を奪い12-2のコールド勝ち。2戦目の沖縄国際大戦は、小川と森田が完封リレーを見せ2-0とした。

 3戦目の東海大九州戦(熊本)は三~6回に谷本や川瀬の適時打などで得点し、8-1のコールド勝ちで全国切符をつかんだ。3試合で打率3割1分1厘、2人の投手で失点3にまとめた。

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 チームによると、打球速度が158キロを超えると、ヒットになる確率が高まるという。選手は、ハイスピードカメラの映像やデータを駆使して、フォームの改善や筋力トレーニングに努めた。

 大学3年の窪田は、入学時137.5キロだった打球速度が1年間で10キロほど向上。「手首のコックを意識したらスイングが速くなった」。チーム全員が打球速度160キロを目標に掲げて、6人が達成した。

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 「ナイスボール!」「感覚良かったんじゃない?」。スポーツパフォーマンス研究施設でミットの音が響く。マウンドの周りには16台のモーションキャプチャーが置かれ、投手は約50個のマーカーを着けて投げていた。

 ボールの回転軸やスピン量、変化量を測定する機器を使い、一球ごとに画面に数値が表示される。計測を終えた岩崎投手は「回転効率をよくするのが課題。データは足りない部分を考える材料になる」。鈴木恵佑投手コーチは「新しい変化球を習得する時に役に立つ」と話した。

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 決勝リーグで、12イニングを無失点に抑えた小川投手はカットボールが決め球だ。「変化が悪いときは手首が寝て、ボールの回転が緩くなっていた。抽象的な部分を自分の中に落とし込みやすくなった」。調子のいい時と悪い時の感覚を、機器を使うことで証明できると喜ぶ。

 藤井雅文監督は「データ分析により目標が明確になった。選手自身が考えるきっかけにもなっている」と手応えを口にする。原俊太主将は「データを指標にすると、モチベーションが上がる」と効果を実感している。