もうすぐ土用の丑の日なのに…県産ウナギに「異例事態」 在庫がはけない要因は価格上昇だけじゃない? 鹿児島

 2023/07/27 07:54
出荷に備え選別されるウナギ=26日、鹿屋市串良上小原
出荷に備え選別されるウナギ=26日、鹿屋市串良上小原
 30日の土用の丑(うし)の日を前に、鹿児島県内産ウナギの出荷が細っている。今年の出荷分はシラスウナギの不漁に加え、ウクライナ侵攻による飼料や燃料の高騰が重なって価格が1割ほど上昇し、売れ行きが鈍ったため。鹿屋市の養鰻(ようまん)業者では、例年は出荷に追われているはずの26日の出荷予定がなく「長年業界にいて丑の日前の出荷がないのは初めて」と頭を抱える。

 出荷価格の上昇を受けて飲食や小売りでも値上げは進んでいる。今年の丑の日の県産ウナギは普段より高くなりそうだ。



 例年になく出荷の動きが鈍い鹿児島県産ウナギ。上昇した生産コストの価格転嫁に加え、割安な海外産との競合が要因とする見方もある。飲食店では仕入れ以外の経費も上がっており、値上げに理解を求めている。

 鹿屋市の養鰻会社「イールファーム」では25、26の両日、従業員らが約6トンのウナギを選別した。だが、出荷日は未定で専用の池で待機する。瀬脇憲道場長(50)は「丑の日前に出荷がないのは異常事態」と話す。

 今年は成魚の売れ行きが悪く6月からは取引先の問屋への出荷が止まった。「問屋も在庫を抱え込んでいるのでは。出来は上々なので、丑の日需要で在庫がはける8月に期待したい」と望みを託す。

 県内外のスーパーなどに、かば焼きを中心に出荷する「おおさき町鰻(うなぎ)加工組合」によると、仕入れ値は去年の同時期より1キロ当たり300円上がったという。

 歩留まりを考えると、商品はそれ以上の価格転嫁が必要で、需要は1割ほど減った。横田信久社長(62)は「安価な中国産に流れている。物価高は高価な食べ物があおりを受けやすい」と肩を落とす。

 飲食店でも厳しさは変わらない。鹿児島市の「うなぎの末よし」では3月から仕入れ値が上がり、4月初旬には価格を変更した。奥山直博社長(53)は「(県の消費喚起策の)ぐりぶークーポンがなくなり、少しぜいたくなものを選ぶ人が減った」と話す。光熱費などの経費も上がり「ギリギリで踏ん張っている」と悲痛な思いを訴えた。

 同市のスーパーも県産の売れ行きの鈍さを懸念する。同店では取り扱いの7割が県産だが、3割を占める中国産の方が売れているという。県産はかば焼き1尾2000円を超えるが、中国産は半値近い。店長は「県産を推したいが、このままでは中国産の割合を増やすかもしれない」と話した。