豚熱ワクチン接種で輸出停止へ 拡大路線だけに…「投資水の泡」「大打撃」 業者、国内相場下落も懸念
2023/09/15 08:35

タイに向けて出荷される鹿児島県産黒豚=2019年11月、曽於市のナンチク
2018年の岐阜県での発生以降、鹿児島を含む九州各県は、未発生やワクチン未接種の県の豚肉を受け入れている香港やシンガポールなど5カ国・地域に輸出できた。佐賀、福岡、大分、長崎は19日、鹿児島を含む残り3県は9月下旬予定の接種開始日から輸出できなくなる。
鹿児島県の22年度の豚肉輸出額は約3億円。畜産物全体の2%だが、前年度比119%と伸び率は畜種別で最も高かった。
黒豚などを輸出する南州農場(南大隅町)の担当者は「輸出拡大へ続けてきた投資が水の泡だ」と嘆く。本州でワクチンを打つ県が広がるにつれ問い合わせが増え、昨年度の売上高は前年度の2.5倍に。「国内より1キロ300円ほど高く売れていたので痛い」とこぼす。
月15~20トンを輸出するナンチク(曽於市)は、大分県の豚も処理しているため、鹿児島の接種開始より早く輸出停止になる可能性があるという。輸出促進部の外山剛次長は「残念だし大打撃。国内の枝肉相場も下がるだろう」と話す。
シンガポールやタイで引き合いが強く、新たに開発した高級ウインナーの商談もまとまりかけていた。「生産者を守るためにも国は接種県も輸出できるよう交渉してほしい」と訴える。
阿久根市に工場があり、黒豚肉や内臓などを輸出するスターゼン(東京)も「ワクチン接種はやむを得ないが、国は海外に安全性をアピールして」と求めた。
JA県経済連(鹿児島市)養豚事業部の喜田克憲部長は「県内で発生すれば元も子もない。今は防疫対策が最優先だ」と話し、ワクチン接種に伴う輸出停止に理解を示した。
農林水産省によると、相手国が認めれば輸出再開できるが、多くの国はワクチン接種県からの受け入れに慎重だ。豚への感染がない「清浄国」のステータス回復には、1年以上豚で発生がなく、ワクチンを接種していないという条件がある。担当者は「野生イノシシでも発生が相次いでおり封じ込めには時間がかかる」と厳しい見通しを示した。
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