新型コロナ抗ウイルス薬 10月から自己負担も 「物価高で苦しいのに…」不安の声 病床半減、相談体制は3月まで 鹿児島県内

 2023/09/22 08:34
新型コロナウイルスワクチンの秋接種を受ける男性=21日、鹿児島市の迫田晃郎クリニック
新型コロナウイルスワクチンの秋接種を受ける男性=21日、鹿児島市の迫田晃郎クリニック
 鹿児島県は21日、新型コロナウイルス感染症の10月以降の医療提供体制を発表した。コロナ患者専用の「確保病床」での受け入れは国の指針に伴い、重症や酸素投与が必要な中等症の人、透析患者などに限定。現在の105機関722床から、55機関の最大385床程度にほぼ半減する。発熱時の受診などの相談体制は、2024年3月末まで。

 外来でコロナが疑われる患者に対応する指定医療機関は、感染症法上の位置付けが「5類」となった5月時点に比べ4増の908機関にとどまる。

 国は5類移行後、外来患者を受け入れる医療機関の拡大を求めている。県新型コロナウイルス感染症療養調整課は「内科や耳鼻咽喉科などで外来対応できる医療機関の比率は全国平均より高いが、感染対策の懸念からなかなか手が上がらない状況がある」としている。

 発熱時やワクチンの副反応の相談に応じる「コロナ相談かごしま」と「受診・相談センター」、療養者向けの「フォローアップセンター鹿児島」は、本年度末まで継続する。

 初回接種を終了したすべての人を対象にしたXBB対応ワクチンの「秋接種」は、9月20日開始。無料接種は本年度末までとなる。

 高額な抗ウイルス薬はこれまで全額公費負担としていたが、10月からは医療費の自己負担割合に応じて3割では9000円、2割6000円、1割3000円が負担となる。



 鹿児島県が10月以降の新型コロナウイルス感染症の医療提供体制を公表した21日、県民からは医療支援の縮小に伴う出費増に不安が聞かれた。インフルエンザなど他の「5類」感染症とのバランスを踏まえ、コロナを“特別扱い”しない環境整備への転換点。医療関係者の受け止めは「やむを得ない」「経営維持には支援が必要」とさまざまだ。

 鹿児島市の迫田晃郎クリニックは21日、定員いっぱいの6人にワクチンを接種した。「秋接種」は、前週から予約が入り始めたという。迫田晃子院長(53)は「高齢の患者さんを中心に予約が相次いでいる。流行期に備えて、接種する人が多くなるだろう」と予想する。

 7回目の接種を済ませた同市鴨池新町の無職吉冨正信さん(86)は、安心した様子だ。「自分の体を守るだけではなく、周りのためにもと思っている。一日も早く打ちたくて、すぐに申し込んだ」

 高額な抗ウイルス薬を含む医療費は、10月から自己負担分が増える。同市武岡5丁目の無職新井千津子さん(77)は「物価高騰で家計は苦しくなるばかりで1割負担でも影響は大きい。コロナ薬だけでも支援してほしい」と求めた。

 入院が必要なコロナ患者向けの病床を用意した医療機関に対して支給される病床確保料は、対象が重症者や中等症者らに狭まるなど縮小する。

 霧島市立医師会医療センターの重田浩一朗副院長(60)は「病床確保の補助金縮小はやむを得ない」と受け止める。同センターは5類移行後、コロナ患者用の病床を3分の1に減らした。感染拡大時は、他の患者が入院する病床も使うことで対応できたという。「補助金よりも、コロナ以外の入院が必要な患者をより多く診ることの方が、地域にとってメリットが大きい」

 鹿児島市の米盛病院の米盛公治院長(58)は「実際にコロナで入院するのは軽症者が多い」と懸念する。特に高齢者らは軽症でも入院が必要な人もいる。5類移行後もゾーニングなどの感染対策は欠かせず、対応に多くの職員が必要になる。国は、入院の受け入れ施設を広げる方針だが、補助金減による経営の負担が壁になりかねないとみる。米盛院長は「自治体が補助金など支援策を考えてくれたら、ありがたい」と要望した。