尖閣警備 高まる緊張…巡視船増強の陰で「保安官の住まいがない」 海上保安庁、鹿児島県の施設跡地を購入へ

 2023/09/22 18:03
海上保安庁が職員宿舎の建設を計画している県農業試験場跡地=21日、鹿児島市西谷山2丁目
海上保安庁が職員宿舎の建設を計画している県農業試験場跡地=21日、鹿児島市西谷山2丁目
 鹿児島県は21日、県有地である県農業試験場跡地(鹿児島市西谷山2丁目)の一部を海上保安庁に売却する方針を表明した。第10管区海上保安本部の職員宿舎用地に充てられる。農試跡は鹿児島市も活用候補地にしており、残る未利用区画は民間への売却に向け、2023年度内に一般競争入札を行う。

 海上保安庁が新たな宿舎施設を県農業試験場跡に計画する背景には、鹿児島港谷山2区で大型巡視船の増強が相次ぎ、鹿児島市に居住する海上保安官が急増していることがある。

 海上保安庁は中国船が領海侵入を繰り返すなど緊張が続く尖閣諸島(沖縄県)周辺領海の警備を強化しており、鹿児島港谷山2区を「海上警備の要衝」と位置付ける。2023年度は大型巡視船2隻を配備し、年度内にさらに1隻を投入予定で乗組員らは19年度から約200人増える見込みだ。

 職員の住まいは、他の国家公務員も居住する複数の合同宿舎と、自前の宿舎1カ所を用意しているものの、既に飽和状態にあり、新しく赴任した職員の住環境整備が急務になっている。

 第10管区海上保安本部は「鹿児島市の平地であれだけの広さの土地は少ない」と強調。鹿児島港谷山2区まで距離が近く、高さ制限が厳しくないことも決め手となった。

 県も財源確保を目的に未利用県有地の売却を進めており、双方の利害が一致したといえる。

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