PTA会費の返還求め提訴 現役教諭が投じた「一石」、学校に驚きと共感 「加入は暗黙の了解」「エアコン設置費に充当おかしい」
2023/11/20 08:03

提訴した男性教諭の給与明細。月々230円がPTA会費として引かれていた
訴状などによると、男性教諭が返還を求めているのは、着任後6年分の会費1万6560円。この間、加入の意思を確認されずに給料から引かれていたと主張している。
これに対しPTAと校長は答弁書や準備書面で、教諭が6年余りの間、会費が明記された給与明細書を毎月受け取りながらも異議を唱えていなかったと反論。「会員であることを少なくとも黙示的には承認していた」としている。
「これまで払わないといけないものだと思い込んできた」と男性教諭は振り返る。だが、長男の小学校入学を機にPTAへ疑問を抱くようになったという。
「PTAに入るのが当たり前という現状に一石を投じたい」と、裁判を起こした意図に理解を求める。
■学校に必要なものには公費を
県内の学校関係者は戸惑いを隠せない。ある公立高校の管理職によると、着任した教員にPTA加入や会費天引きについて意思を確かめたことはないという。「新学期の事務作業は多忙。加入する前提で処理してきた」と明かす。小学校の管理職は「保護者との信頼関係を築く場で、入るのが当然だった。今後は意思確認が必要な時代になるのでは」と受け止める。
一方、現場には驚く声だけでなく、共感する意見もある。「そもそも入会申込書がないのがおかしい」。40代高校教諭は、数年前からPTAに入っていない。教諭は、学校のエアコンの設置費や管理費にPTA会費を充てている例を挙げ「学校に必要なものは公費でまかなうべきだ」と、使われ方を疑問視する。
「加入は暗黙の了解。入らない選択肢を考えたことはない」と50代小学校教諭。「運動会の設営や通学路の草刈りを手伝ってもらっており必要な存在」と感謝する。ただ活動内容については「会合はリモートでもできるし、緑門作りなど見直していいものもあるのでは」と漏らす。
■学校の下請けのような業務
企業などの組織論を研究する同志社大学政策学部の太田肇教授は「PTAが任意団体である以上は加入の意思を確認する必要があり、結果として未加入者や退会者が出るのはやむを得ない」と指摘する。
太田教授によると、半ば強制加入となっている日本に対し、米国では地域住民がボランティアで参加できる例も多い。日本に比べてオープンで、活動内容も柔軟に見直すという。
「学校の下請けのような業務を返上し、子どものために意見を言う場になった例は少なくない。日本でも、自発的に参加したくなる組織へ変革していく必要がある」と提言した。
■私はこう考える=県PTA連合・太田敬介会長
◇任意か強制か…二項対立で考えるべきではない
◇テーマは多様性、自分にできることの模索を
(教員の提訴について)裁判が進められている事案なのでコメントは控える。教育の課題が多岐にわたる中、学校だけに任せるのではなく、家庭が一緒になって解決していこうというのがPTA。保護者と教員の信頼関係は何よりも欠かせない。今後も活動の本質を理解してもらい、協力していただきたい。
PTAは、戦前を反省して、民主的な教育で平和な日本をつくりたいという思いから全国に広がった。誰か一部の人が担って大変な思いをするのではなく、みんなで少しずつ力を出し合おうと全員参加型のルールができた。
携わる人がどんどん入れ替わるので、ルールを見直す機能が働きにくくなり、前例踏襲やルールを守ることが目的化してしまうこともあるのかもしれない。
あくまでも教育を目的とする活動なので、やりたい人だけがやればいいというものではない。はじめは負担感があるかもしれないが、参加してみたら教員と保護者が話す機会になったり、保護者同士で仲良くなって子育ての悩みを相談できたりもする。
PTAは民主的に話し合い合意形成してきた。組織がどうあるべきかという議論は積極的にやるべきだが、任意か強制かという単純な二項対立の構図で考えるべきではない。
人の考え方が多様化する中、PTAへの関わり方も「多様性」が大きなテーマになる。それぞれが自分にできることを模索することが大切だ。
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