国立唯一の体育大 増す存在感…大半は県外出身だが、鹿児島チームで国体出場 充実した施設も開放「連携、一過性にしない」 地域密着図る鹿屋体育大

 2023/11/19 08:03
〈鹿児島国体〉会心の演技を終え笑顔をみせる杉野(左)ら体操成年男子鹿児島のメンバー=鹿児島市の西原商会アリーナ
〈鹿児島国体〉会心の演技を終え笑顔をみせる杉野(左)ら体操成年男子鹿児島のメンバー=鹿児島市の西原商会アリーナ
 選手が躍動し、各地の会場は熱気に包まれた。新型コロナウイルス禍による史上初の延期を乗り越え、先月閉幕した特別国民体育大会「燃ゆる感動 かごしま国体」。県は2011年から選手強化や施設整備、運営費などに総額約267億円(特別全国障害者スポーツ大会を含む)を投じてきた。51年ぶりの鹿児島開催となった国内最大のスポーツの祭典が、次代へ残したメッセージとは-。

 電光掲示板に鹿児島の得点が表示されると、観客席から割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こった。9月下旬、鹿児島国体の体操で成年男子が初優勝を飾った。2位以下を大きく引き離しての快挙。選手5人のうち、4人は鹿屋市の鹿屋体育大学で腕を磨いた学生やOBだ。

 卒業生の杉野正尭選手(県スポーツ協会)は、東京五輪の日本代表補欠にも選ばれた実力者。演技後は「(鹿屋は)良い意味で競技に没頭でき、人間としても成長させてもらった地。演技で恩返しできた」と喜びを口にした。同競技では成年女子にも学生3人が出場し、6位入賞に貢献した。

 鹿屋体大の単独チームで臨んだサッカー成年男子は、社会人の強豪を次々と下して準優勝。剣道の成年男女には学生と卒業生、教員が出場し優勝の原動力になった。今大会の県勢入賞種目で、現役の学生と教員が携わったのは11競技15種目に上り、計282点を獲得。ほかにも自転車や柔道など、卒業生が存在感を発揮した競技は少なくない。

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 国立唯一の体育大学として、1981年に開学した鹿屋体大。全国でも強豪の剣道やバレーボール部などに有力選手が集まる。大半は県外出身者だ。これまで国体は、それぞれの故郷から「ふるさと選手」として出場するケースが多かったという。

 鹿児島国体に向け、県と大学側は2016年から連携を深めてきた。3年延期が決まってからは「鹿屋体育大学との強化連携部会」を設置。学生に県代表選手としての出場を呼びかけ、有力な高校生の進学を促進してきた。こうした取り組みが結実し、鹿児島国体では選手、監督合わせて54人が県代表選手として出場。昨年の栃木国体での22人から倍増し即戦力となった。

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 鹿屋体大の充実した練習場や研究施設を、選手強化に役立てている団体もある。県アーチェリー協会は今夏、最新の測定機器がそろう「SPORTECスポーツパフォーマンス研究センター」を初めて利用した。

 強化指導員が構えから矢を放つ瞬間までの動作を詳しく測定。米倉雅強化委員長(43)は「トップ選手の射形や重心の使い方などは、今後の少年世代の育成にも活用できそう」と語る。

 バレーボールは、女子の少年と成年代表の合同合宿を学内で開催。練習試合をしたり、学生が高校生にアドバイスしたりして技術を高め合った。ラグビーや体操も合同練習などで汗を流した。

 鹿屋体大バレーボール部監督で、競技力向上・国体担当学長補佐の浜田幸二教授(59)は「地元国体は大学がより地域に密着し、貢献するいい機会となった」と成果を語る。その上で「連携を一過性のものとせず、レガシーとして残していく必要がある」と意欲を見せる。

(連載「かごしま国体閉幕 燃ゆる感動次代へ」4回目より)

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