一過性のブームか、定着か…増えたギョーザ無人販売所、アフターコロナの姿を模索

 2023/11/20 11:48
冷凍ギョーザを販売する無人店=鹿児島市東千石町
冷凍ギョーザを販売する無人店=鹿児島市東千石町
 24時間営業の無人冷凍ギョーザ販売店が鹿児島県内で増えている。新型コロナウイルス下の「非接触」需要を追い風に県内外の企業が続々と参入。2年ほどで20店近くに拡大した。店内を見渡す複数のカメラが防犯を担う。運営コストが低く、空き店舗を活用できるという利点が出店の背景にあるようだ。

 飲食店が集まる鹿児島市東千石町の一角。ガラス張りのこぢんまりとした店舗内に、冷凍ギョーザがショーケースに鎮座する。客の目を引くのがモニター画面。店内を隅々までとらえる防犯カメラの映像がリアルタイムで流れていた。

 飲食店「ぎょうざのみっちー」(同市)が店舗の空きスペースを生かそうと、2022年7月に開店した。客はケースから商品を取り出し、料金を専用箱に入れるだけ。川路圭介社長(38)は「鹿児島でもギョーザ人気が高まっている。万引のリスクもあると心配したが、経費を抑えられるメリットは大きいと考えた」と語る。

 県内では新型コロナが猛威を振るっていた21年ごろから、専門店などの味を売りとする無人販売店が相次いで出店した。24個入りや36個入りで千円とする店が多い。

 同市の住宅街などに店を構える「福耳餃子」(福岡市)。5店舗中4店は今年4月にオープンした。担当者は「冷凍庫を置くスペースさえ確保できればいい。賃料を安く抑えられ、商品にコストをかけられる」と説明する。

 無人販売所をよく利用する鹿児島市の専門学生、窪園祐介さん(21)は「店員と顔を合わせずに、自分のペースで選べるのが魅力。深夜に食べたくなり、買い求めたこともある」。

 懸念された防犯面について、複数の店舗関係者は「カメラが抑止力となり、大きな被害は起きていない」と話す。料金箱に小型の鳥居を付け、良心に訴える店もある。

 県内外の14種類をそろえる同市荒田2丁目の「餃子バカ一代」は、21年までクリーニング店だった。コロナ拡大に伴い、冠婚葬祭が減少し、さらにリモートワークが普及。礼服やスーツの取り扱いが減り、無人販売店に改装した。

 運営する不動産業の内田圭亮さん(43)は、新型コロナの感染症法上の位置付けが緩められ街が日常を取り戻す中、無人販売に対する風向きの変化を感じている。「コロナ下は無人という非日常感を楽しもうと多くの人が訪れた。今は飲食店の利用も増え、客足も落ち着いている。別の品の販売も考えたい」と知恵を絞る。

 同市吉野地区ではラーメンやパン、ハンバーグなど幅広く冷凍食品を扱う店も出始めている。内田さんは「無人販売は分岐点を迎えている」と言い切る。コロナ下で拡大した新たな販売スタイル。一過性のブームで終わらせまいと関係者の模索は続く。