米軍はNGでも自衛隊はOK 自衛隊拠点がない徳之島での訓練、統幕長も「これだけできるとは…」と驚く歓迎ぶり

 2023/11/20 11:03
訓練の様子を見つめる住民ら=19日、徳之島町花徳
訓練の様子を見つめる住民ら=19日、徳之島町花徳
 自衛隊拠点のない鹿児島県徳之島で異例だった訓練は、地元3町が関連施設を誘致する中で定着しつつある。3度目となった今回は規模もエリアも拡大し、島がまるごと訓練場の様相を呈した。住民には経済効果を期待する声の一方、「歯止めが利かない」と戸惑いも聞かれる。

 島内では10日から訓練が本格化。陸海空の部隊が海岸線を中心に15カ所以上で拠点をつくり、幅広い訓練をこなす。島北部の手々海浜公園(徳之島町)には輸送機オスプレイが離着陸し、西部の景勝地・犬田布岬(伊仙町)では無人機「スキャンイーグル」が断崖上空から周囲を警戒した。19日に徳之島を初めて視察した吉田圭秀統合幕僚長は「これだけできるのは信じられない」と地元の協力に感謝した。

 北西部の天城町兼久であったサトウキビ畑へのパラシュート降下では、一帯の農家数十人が使用を承諾。実際に降りた畑には平均収益に基づく補償が支払われる。承諾した藤岡享一さん(67)は「国のやることだから反対しても仕方がない。自分の所には降りなかったが、補償はいいボーナスになる」と話した。

 15日に自宅からオスプレイの離着陸を見届けた徳之島町手々の農業嶺田剛さん(70)は「安保情勢を聞けば、訓練強化の筋は通る。今は物珍しいから良いけど頻繁に来るのは困る」。

 2010年の米軍普天間飛行場(沖縄県)の移設反対集会には約1万5000人が参加した。「あの情熱を忘れ、自衛隊なら大丈夫となっている」と話すのは同町の自営業坂井留美子さん(73)。「今は米軍もセット。既に歯止めが利かなくなりつつある」とため息をついた。

 幼少期に空襲を経験した上木久市さん(85)=伊仙町面縄=は「国防は大事だが、軍用機を見るとやはり戦時を思い出す。不戦を誓った憲法は絶対に守ってほしい」と強調した。