「タッチ・アンド・ゴー」の騒音、どれくらい? 西之表市職員が奄美の自衛隊訓練視察 馬毛島FCLP、25年度にも

 2023/11/21 08:43
奄美空港から約5キロ離れた高台で戦闘機の騒音を測定する西之表市職員=17日、奄美市の明神崎展望台
奄美空港から約5キロ離れた高台で戦闘機の騒音を測定する西之表市職員=17日、奄美市の明神崎展望台
 20日まで全国で行われた自衛隊統合演習では、基地が攻撃を受けて使えなくなった事態を想定し、初めて鹿児島県内の空港を利用する戦闘機訓練を徳之島と奄美大島で実施した。報道関係者や住民のほか、基地整備が進む馬毛島を抱える西之表市の職員も訓練を視察。早ければ2025年度に始まる同島での米軍空母艦載機陸上離着陸訓練(FCLP)を見据え、市民の不安が残る航空機騒音への警戒感をうかがわせた。

 今回の戦闘機訓練は滑走路に接地後、出力を上げて直ちに離陸する「タッチ・アンド・ゴー」。13、15日に徳之島空港(天城町)、17~19日に奄美空港(奄美市)と計5日間あった。FCLPでは陸上の滑走路を空母の甲板に見立て、タッチ・アンド・ゴーを旋回して繰り返すとされている。

 西之表市は「騒音問題は市民の関心事であり、行政として状況を把握する必要がある」として、馬毛島対策係の2人が17日に奄美市入り。空港屋上の送迎デッキと、空港から南西に直線距離で約5キロ離れた展望台に分かれて訓練を見守った。

 それぞれスマートフォンアプリなどで訓練時の騒音を測った結果、2カ所とも最大80~90デシベルだった。同日は北西の風で、音が海側に抜ける気象条件。鎌田敏幸係長は「音の感じ方は個人差がある。庁内で情報共有し、今後の対応を検討したい」と述べるにとどめた。

 80~90デシベルはゲームセンター内や航空機内、パチンコ店内が目安とされる。空港デッキでは自主的に戦闘機音を測定していた見学者も多く、「体に響く大きさだと感じたが、数値で見るとそれほど高くなかった」などの感想が聞かれた。

 馬毛島の基地整備を巡っては、防衛省が環境影響評価(アセスメント)で日米戦闘機の音響データを示している。馬毛島から最も近い西之表市南西部にあたる10キロ地点で離陸時は80~90デシベル前後、着陸時と水平飛行が60~80デシベルの間、FCLPのタッチ・アンド・ゴーで推力増強装置(アフターバーナー)を使った際は80~90デシベル前後と予測する。

 FCLPはかつて米軍厚木基地(神奈川県)で実施していたが、深刻な騒音被害を受け、1991年から硫黄島(東京都)に暫定的に移った。馬毛島では年1、2回(1回あたり10日間程度)、年間最大5356回(午前11時ごろ~翌午前3時ごろ、うち午後10時以降563回)が計画されている。