原発「再稼働」には必要な“地元同意”なのに「運転延長」には不要…地元の軽視、ではない?
2023/11/21 07:28

九州電力川内原子力発電所1号機(左)と2号機=1日、薩摩川内市久見崎町
2011年の東京電力福島第1原発事故を踏まえた新規制基準施行後の15年8月、川内原発は全国で最初に再稼働した。「立地自治体などの理解と協力を得るよう取り組む」と定めた国のエネルギー基本計画などに沿う形で、県知事と薩摩川内市長が同意を表明した。
ただ、同計画には運転延長の条件の記載はない。地元同意を組み込むには、九電、県、薩摩川内市で結ぶ安全協定の見直しが必要と解釈されている。
協定は1982年、住民の安全確保や環境保全などを目的に締結。原子炉施設の増設や変更などは事前協議の対象と規定するが、運転延長は協議の対象になっていない。
「九電には県の考え方を尊重してもらっている。制度の変更は考えていない」。規制委が運転延長を認めた2023年11月1日、塩田康一知事は報道陣に、現時点で協定を見直さない方針を説明。「運転延長は安全性を確保できるかということにかかっている」とし、規制委や県原子力専門委員会の技術的な評価を重視する姿勢をにじませた。
7日に鹿児島を訪れた九電の池辺和弘社長も「規定がないからといって地元を軽視することはない」と現状維持を主張。原発が立地する同市も「原子力政策は国や事業者の方針で地元の理解が必要とされており、現段階で協定を見直す状況にない」としている。
これに対し、同市の無職男性(72)は「事故があれば土地を追われるのは住民。地元を軽視している」。同市の公務員有馬佑騎さん(31)も「リスクを負う地元の意見が反映されなければ原発は成り立たないはずだ」と訴える。県内では60年超運転を見据え、地元同意の必要性を求める声も上がる。
東洋大学の中澤高師教授(環境政治学)は「どの原発も協定作成時に運転延長を想定していなかったのでは」と推察。「新たな事態に対し、地元同意を含めるかどうかの議論が欠かせない」と指摘する。
その上で「運転延長はリスクが継続し、地元財政、経済にも影響を与える重要な変化。少なくとも立地自治体や都道府県の合意は必要」と話した。
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