時計 2021/04/29 12:00

2年前のこの日、小6だった弟はジョギング中に倒れた 天国へ届ける聖火リレー 1年延期で兄が命日に出走

弟への思いを胸に聖火を掲げて走る吉村壘さん=28日、指宿市
弟への思いを胸に聖火を掲げて走る吉村壘さん=28日、指宿市
 「天国の弟に届くよう走った」-。鹿児島県入りした東京五輪聖火リレー2日目の28日、指宿市区間で第1走者を務めた吉村壘(るい)さん(15)は2年前のこの日、2歳下の弟・星(きら)さんを亡くした。同市山川の自宅から3キロ離れた鰻池へのジョギングを6人家族全員で楽しんでいる最中に突然倒れ心不全で亡くなった。小学6年だった。

 末弟の和(なごむ)さんを含め3兄弟は野球少年。自宅の庭には野球練習用のネットもしつらえてある。父・平(たいら)さん(42)が2年前、3人のために購入した。ゴールデンウイーク中に組み立てようと注文したが届いたのは星さんが亡くなった数日後。「星が帰ってくるお盆までにと思ったが気持ちが乗らず、10月まで組み立てられなかった」

 家族が前を向くため、平さんが、壘さんを聖火ランナーに応募した。吉報が届くと家族全員でその日を待ち望んだ。コロナ禍で五輪は1年延期され、聖火リレーの日は1日ずれて、星さんの命日とちょうど重なった。それを知った平さんと母・真弓さん(42)は「星が何か伝えたいのかな」と泣いた。

 28日は三回忌だった。午前中にお寺で法要を行い、聖火リレーに備えた。親戚や近所の人から「頑張って」と励まされ心強かった。「去年の命日は家族全員がまだ不安だった。1年たって、周りのみんなが応援してくれるという気持ちになった。星もきっと見ていてくれる」

 沿道で家族が見守る中、少し照れながらトーチを掲げた。

 「星、見ててくれよ。これからは笑って暮らしていくから」。ポケットには星さんの写真が入ったペンダントを忍ばせていた。「弟と一緒に走っていた感じ。『どうだった』と声を掛けたい」と振り返った。

 亡くなった事実はまだ受け入れられない。和さんからキャッチボールに誘われると、星さんがいない現実が急に胸に迫ってくる。「でも前を向いて生きていくと家族で決めた」と表情を引き締めた。

東京五輪 聖火リレー特設サイトはこちら
(各コースのランナーの写真もアップ)