時計 2021/05/10 12:40

元阪神・横田慎太郎さん(鹿児島実卒) 「最後の港まで一緒に」母の一言で前向いた 大病2度越え、本に込めた「苦しむ人の力に」

2度目の闘病を終え、笑顔を見せる横田慎太郎さん(本人提供)
2度目の闘病を終え、笑顔を見せる横田慎太郎さん(本人提供)
 2度目の大病を越え、「人々に希望を与えたい」という思いは、より強くなった。元プロ野球・阪神の横田慎太郎さん(25)=鹿児島実高卒=は、現役時代の脳腫瘍に続き、昨年9月、脊髄の腫瘍に見舞われた。半年に及ぶ闘病を終え、「2度も命をいただいた。経験を伝え、悩み苦しむ人の力になりたい」。12日には、自身の半生をつづった本が出版される。

 現役を引退して鹿児島へ戻り、脳腫瘍を乗り越えた経験を動画配信サイト「ユーチューブ」やコラムで伝える活動を本格化させた直後、再び病魔に襲われた。「腰や足に強い電気が走るような、異常なほどの痛み」が約1カ月続いた。受診した結果、脊髄に腫瘍が見つかった。「もう二度と病気はしたくないと思っていた。初めは受け入れられなかった」

✲「もう治療やめたい」

 すぐに大阪での入院生活が始まった。1軍復帰を目標に病へ立ち向かった現役時代と違い、何を支えにすればいいのか…。放射線や抗がん剤治療は前回よりも増え、体は悲鳴を上げた。「もう治療をやめたい」。前回は決して吐かなかった弱音を、つい母に出した。

 「乗った船は途中で降りられないよ。最後の港まで一緒に行こう」。その一言で前を向けた。仕事を辞め、泊まり込みで世話してくれた母と、毎日電話で励ましてくれた父。「ずいぶん心強かった」

 何より、つらそうに下を向いて過ごす他の入院患者たちの姿に、自らを奮い立たせた。「自分が病気に打ち勝って、悩み苦しんでいる人の励みになる」。その目標を胸に病と闘い、そして打ち勝った。鹿児島へ戻って1人暮らしを再開し、「次の目標は元の自分の体に戻すこと」と笑顔を見せる。

✲『奇跡のバックホーム』

 12日に発売される自身初の書籍「奇跡のバックホーム」(幻冬舎、定価1540円)には、視力の異常など脳腫瘍の後遺症を抱えながらも鮮烈な印象を残した引退試合や、小学生からプロになるまでの思い出を記した。

 「野球をしていない人、苦しい思いをしている人、目標がない人、たくさんの人に読んでもらって、希望を持ってほしい」と力を込める。「小さな目標でもいい。目標があれば、最後には必ず幸せな日が来る」。自らの経験を伝える動画配信などの活動は、体調と相談しながら再開する予定だ。