2021/07/12 21:36

JAC「離島の翼守る」 地域航空3社、大手2社と〝編隊飛行〟 共同運航 一括予約で利便向上 技術協力、機材調達も模索

自社の航空整備士が進めるATR機の点検作業=霧島市溝辺の日本エアコミューター格納庫
自社の航空整備士が進めるATR機の点検作業=霧島市溝辺の日本エアコミューター格納庫
 日本エアコミューター(JAC、霧島市)など九州を拠点にする地域航空3社と、全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL)の大手2社による共同運航計画が明らかになった。競争よりも連携で地域の足を守る取り組み。JACは鹿児島県の離島を結ぶミッションを担い続けるための手段の一つ、と位置づける。

 鹿児島空港隣の格納庫では1日、JACが所有する1機の整備が進んでいた。尾翼の一部を外し、さび止め塗料を塗ったり、新たなエンジンを取り付けたり。5000時間の飛行ごとに義務づけられた点検だという。

 JACは現在、仏・ATR社製のプロペラ機2種(48席と70席)計10機を県内離島路線を中心に19路線に投入している。プロペラ機は近距離運航での経済性などから、地域航空会社で多く採用されている。車の車検に当たる重整備などの定期点検は外注に委ねるケースが多いが、JACは自前の格納庫を持ち、点検を担う約40人の航空整備士を抱える。

 「バス会社が自分たちで車検や整備もやるイメージ」。山原和志点検整備室長が説明する。2018年6月には、天草エアライン(AMX、熊本県)からの整備業務管理の受託を始めた。点検期間中は代替機を貸し出す。

 JAL子会社のJACと、全便がJALとの共同運航のAMX。この時期の両社の連携は、「持続可能な地域航空」を模索するうねりの渦中にあった。

■聖域越え協業

 人口減による需要の先細りを見据え、国土交通省は16年夏、地域航空の将来に関する有識者会議を設けた。会議は18年3月、JACやAMXなど地域航空会社に「合併か経営統合」を提言するが、年末のまとめで「課題が多く実現難易度は高い」との見解に至った。

 そこで翌19年秋、両社にオリエンタルエアブリッジ(ORC、長崎県)、ANA、JALを加えた5社は「協業の深化」を目指し、事業組合を立ち上げる。22年秋からの共同運航計画に結びついた。

 始まると、何が変わるのか。JAC側の説明では、例えばANA便で羽田から鹿児島に飛ぶ客が、JAC運航便で屋久島まで乗り継ぐ際の一括予約が可能になる。1区間ずつ購入する現状と比べ、手続きがスムーズだ。

 「予約発券システムは航空会社にとって聖域とも言える。相互接続は大きな一歩」(JAC経営企画部)。系列をまたぐ協業が注目されるゆえんだ。

■消滅への危機感

 共同運航計画で終わりではない。5社は安全や運航・整備に関する技術協力を推進。業務効率化、機材の共同調達も模索していくという。背景には「空のローカル線」消滅への共通する危機感がある。

 JACによると新型コロナウイルス下、20年度は最大で前年度比約4割の減便だった。経営効率からすればもっと減らすこともできたが、通院などの生活移動や医療従事者らの出張、PCR検査の検体やワクチン輸送といった需要がある。「予約ゼロでも飛ばす。お客さまが減ってもライフラインを守るのがミッション」と自覚する。

 生き残りを模索する手立てとしての共同運航で関係者が見据えるのが、コロナ後の観光拡大だ。世界自然遺産登録で注目される奄美・沖縄。JACの武田守人経営企画部長は「このエリアを一番多く飛んでいるのが私たち。まずは国内の交流人口拡大に向け、新たな旅行商品の開発を進めたい」と望みを託す。

【共同運航】
 複数の航空会社で、一つの航空機の座席を販売すること。「コードシェア」とも言う。航空機を運航する航空会社にとっては売れ残る座席が少なくなる。座席を買い取る航空会社は、運航する便数や路線を実質的に増やすことができる。
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