東京・銀座で40年。丸谷才一、星新一らが愛した文壇バー。コロナに負けない、義理人情守る―薩摩おごじょ ママの一念

 2021/10/09 20:50
東京・銀座で文壇バー「ザボン」を経営する水口素子さん
東京・銀座で文壇バー「ザボン」を経営する水口素子さん
〈東京・銀座で文壇バー「ザボン」経営 水口 素子(みずぐち・もとこ)さん=姶良市蒲生出身〉

 東京・銀座に文化勲章受章者の丸谷才一(故人)ら作家から愛される老舗クラブがある。文壇バー「ザボン」を経営するのは姶良市蒲生出身の水口素子さん。新型コロナウイルス禍で厳しさを増す飲食業の苦労、思いを聞いた。

 -文壇バーと呼ばれる。
 「最初は3坪ほどの小さなお店を1人で切り盛りしていた。丸谷先生をはじめ、新田次郎さんや星新一さんら多くの作家がいらっしゃるようになり、編集者や出版関係者もお見えになった。先日亡くなられた漫画家のさいとう・たかを先生からは『お店の応援に』と絵を頂戴し、今も店に飾っている」

 -この道に入ったきっかけは。
 「旧蒲生町の小中高校を卒業して上京し、鉄鋼商社に入った。役員秘書時代、後に名誉棋聖となる藤沢秀行さんと知り合い、当時文壇バーとして有名な銀座の店にご一緒したのが始まり。5年の修業を経て独立。店名は郷土特産のボンタンにちなみ、丸谷先生が付けてくださった」

 -客は今も作家が多い。
 「今年1月に亡くなった半藤一利さん、人気作家の重松清さんや林真理子さんも来てくださるが、文壇関係だけでなく一般企業のなじみの方も多い。職業に関係なく、映画や伝統芸能、スポーツなど幅広く知的な会話ができる場所が目標。人と人がつながり、義理と人情を重んじる銀座の伝統を守っていきたい。そこから新しい文化が生まれることも期待している」

 -コロナ対策で東京に出されていた緊急事態宣言が解除された。
 「昨年2月以降、銀座の人通りは激減し、足しげく通ってくれた常連も来られなくなった。フェースシールドを着けたり、1日1組限定企画をしたりしたが、延長を繰り返した緊急事態宣言下ではほとんど休業状態。出勤できない女性スタッフは清掃やレジ打ちのアルバイトでしのいだと聞く。コロナ収束が見通せず、お酒を飲むのがはばかられる自粛傾向はしばらく続くのではないか」

 -今後は。
 「コロナもあって正直やめてしまおうと思ったこともある。しかし今は、コロナに負けずお店を残すことで、40年にわたって受けてきたお客さまからの恩を返していこうと思い直した。『明けない夜はない』という気持ちだ。11月には近くのビルに移転し、リニューアルオープンする。ぜひ故郷・鹿児島の方にも上京の際にお越しいただければうれしい」
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