終戦時、「英語上達に役立つ」と辞典をくれた下宿生 「大事なもの。返したい」と思い続けた70年 ようやく再会、お礼言えた

 2021/10/06 20:54
旧制七高跡の記念碑前で英英辞典を返却する鶴田幸男さん(左)と、受け取る前田耕作さん=出水市高尾野町下水流
旧制七高跡の記念碑前で英英辞典を返却する鶴田幸男さん(左)と、受け取る前田耕作さん=出水市高尾野町下水流
 出水市高尾野の鶴田幸男さん(89)が3日、終戦直後に実家に下宿し、英英辞典を譲ってくれた旧制七高OBの前田耕作さん(93)=大阪府吹田市=と約70年ぶりに対面した。「大事なもの。機会があれば返したい」と思ってきた辞典を手渡し、念願を果たした。高尾野に一時移転していた七高跡地や机を並べて勉強した実家跡を案内し、思い出話に花を咲かせた。

 前田さんは鹿児島市出身。七高に進み、鶴田さんの実家に1年半ほど住んだ。辞典は戦時中に在籍していた海軍兵学校の蔵書で、終戦時にもらったもの。高尾野を去る際、旧制中学生だった鶴田さんに「英語上達に役立つ」と贈った。

 七高卒業後に交流は途絶えたが、鶴田さんは辞典を大切に保管。今年4月に南日本新聞で紹介されたのをきっかけに、前田さんから連絡があった。電話で話したものの、新型コロナウイルスの感染拡大で会うことは難しかった。

 前田さんは3日、緊急事態宣言の解除を受け、家族との帰省に合わせて出水市に立ち寄った。JR出水駅で再会した2人は「70年ぶりですね」と固い握手。下水流小学校にある七高跡の記念碑前で辞典が返された。

 前田さんは「贈ったものだが、高尾野で世話になった記念に預かって宝物にする。生きていてよかった。また来たい」と笑顔。鶴田さんは「大事なものだったはずと、ずっと気になっていた。返せてほっとしている。会えて楽しかった」と話した。
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