【令和決戦の構図・衆院選鹿児島2区】前知事が参戦 保守票取り込みでつばぜり合い

 2021/10/17 07:36
 「迫ってくる相手が初めて見えた戦い。当選は簡単ではない」。10日、自民前職の金子万寿夫氏(74)が鹿児島市で開いた事務所開き。谷山地区を地盤とする園田修光参院議員(64)=比例=が、4期目を目指す陣営の危機感をあおった。

 「相手」とは無所属新人で元知事の三反園訓氏(63)のことだ。知名度を武器につじ立ちなど選挙区の至る所で「ゲリラ戦」(自民県議)を仕掛け、金子氏陣営は色めき立つ。

 過去3回臨んだ選挙は開票と同時の「午後8時当確」だった。支持団体の強固な組織力を誇り、独自の戦いに徹した。今回は6月の通常国会閉会以降、選挙区に張り付いてきた。通常は解散から走りだす衆院選で、異例の4カ月にわたって陣頭指揮を執る。

 組織戦と並行して地方議員と地元を連日歩き回る「どぶ板選挙」を展開。サツマイモ基腐(もとぐされ)病が発生した南薩の畑では汗だくになって農家の声に耳を傾けた。「現場まで来てもらい、ありがたい。政策に反映して」と南九州市の別府宏一さん(40)。

 要望は衆院解散直前の12日、県などと協力し農林水産相に伝えた。金子氏は「対話で課題を学び、結果で地元に貢献する」と充実した表情を見せる。

 前回衆院選には、同じ奄美出身の自民県議が職を辞して挑んできた。そのグループも今回は自民に回帰し、「島から国会議員を」と一枚岩となって背中を押している。



 対する三反園氏は知事時代の人脈を頼りに保守の取り込みに躍起だ。奄美を切り崩さなければ勝利は見込めない。3~9日は敵陣の3島を駆け巡り、「付け入る隙はある」と手応えをつかむ。

 徳之島では自民の選挙をこれまで取り仕切った鮫島文秀氏(81)が自民党支部幹事長を9月辞職し、島の後援会長に就いた。闘牛連合会長を10年以上務め、ネットワークは広い。基幹作物のサトウキビ政策への不満を訴え、「テレビ局記者時代の永田町人脈に振興策を託したい」と語る。

 三反園氏は町議ら自民党員と一緒に有力者や建設業者など保守層への攻勢を強める。本土では価格低迷に悩む茶農家や苦境にあえぐホテル経営者、主婦らと意見交換を重ねる。時間を見つけては道路沿いに立ち、車列に手を振る。「支えてくれる大半は自民支持者」と三反園氏。陣営は「表は金子氏でも、裏ではこっちだ」と水面下の広がりに自信を深める。

 一方、金子氏は「相手の情報は全部入る」と多少の離反は織り込み済みの様子だ。自民県議も「三反園氏が知事を務めたのは1期。支持者に広がりはない」と影響は軽微とみる。つばぜり合いは続いている。



 元県議で共産新人の松崎真琴氏(63)は政権交代を訴え、街宣活動を続ける。前回は金子氏と元県議の保守票は計13万、共産など野党票は約6万。保守の両氏が激しく競れば、野党統一候補の松崎氏も好勝負に持ち込める計算だ。

 野党最大の支持組織で共産と距離を置く連合は自主投票を決めており、反自公勢力の結集が課題だ。そんな中、公示直前に共通政策を旗印に共闘が実現し、松崎氏は「市民の力で政治を変えられる歴史的な総選挙だ」と力を込める。