【令和決戦の構図・衆院選鹿児島3区】入り交じる支援者 勢力伯仲の一騎打ちへ

 2021/10/18 11:00
 自民前職の小里泰弘氏(63)と立民元職の野間健氏(63)による一騎打ちが濃厚な鹿児島3区。選挙区が1減した2017年の区割り変更で旧4区から国替えした小里氏に、野間氏は1万2000票差で敗れた。合区された阿久根市などで知名度不足が課題だったが、草の根活動に徹し、顔と名前は浸透しつつある。

 これまでに立憲民主の重鎮、小沢一郎氏が姶良市の事務所設立に合わせ選挙区入り。9月は泉健太政調会長が、全国行脚で真っ先に訪れた。泉氏は「野間さんの全力支援を党本部に訴える」と宣言。野間氏も「何としても勝ち上がる」と声を張り上げた。立民県連の伊地知紘徳幹事長代行は一連の鹿児島入りを「勝てる可能性が高いとみている」と歓迎、全面支援に期待する。

 希望の党から臨んだ前回、旧4区に、ほぼなかった野間氏のポスターは相手陣営と争うように立ち並ぶ。全10市町に後援会を整えた野間氏は「背中は見えたが、まだまだ遠い」。

 小里氏は「前回の票差を広げて勝つ」ことを“至上命令”に掲げる。校区単位より細やかという後援会は約300に及ぶ。全7市に市議団後援会を立ち上げ、女性部を細かく再編成。岩切秀雄・元薩摩川内市長が陣頭指揮し友好企業・団体を回り引き締めに躍起だ。

 北薩は今夏の大雨で川内川流域が被災。小里氏は国交相視察に同行するなどした。党国土交通部会長を経験、治水・防災に明るく、「自らに課せられた活動」と話す。県内の衆院議員で最も岸田文雄首相に近い谷垣グループに所属、総裁選もいち早く支持に回った。

 ただ一連の新型コロナウイルス対応などで自民党や小里氏陣営への風向きは順風と言えない。小里氏の妻・祐子さんを中心とする女性部「友祐会」や、青年部の行動隊がつながりを横にも広げ、政策の浸透に取り組む。同隊幹部を務める40代の会社社長は野間氏を支援した時期もあった。「西回り自動車道や川内港再開発事業は小里さんでないと進まないのでは」とみる。

 薩摩川内市など旧3区は、05年の郵政選挙で保守分裂した選挙区だ。自民の集票マシンと呼ばれた郵政団体「全国郵便局長会」(全特)は郵政民営化方針に反発し自民を離れた経緯がある。民営化に反対し自民を去った旧国民新党の松下忠洋氏(故人)に続き、保守中道の後継者となった野間氏を支えてきた。

 西薩地区のある郵便局長OBは「今回も野間さん」と明言。「声掛けで動いてくれる住民がいる。現役局長も頑張るはず」。だが郵政団体は一枚岩ではない。北薩地区の局長は「前回から小里さんに回った」と明かす。

 公示直前に県内で野党共闘が実現、焦点となっているのは三つどもえだった前回の共産票1万余だ。ただ、野間氏陣営にとって野党色が強まれば保守票取り込みに不利に働くため神経をとがらせる。

 3区で天王山となるのは大票田の薩摩川内市。小里氏陣営が「前回は6000票差をつけられたが、今は五分五分では」と言えば、野間氏陣営は「牙城の優勢を保ちつつ、敵陣の旧4区で上積みを図っている」と譲らない。

 一騎打ちの公算が大きくなり、両氏の来歴などを巡り陣営支援者は入り交じって過熱。鋭さは増すばかりだ。「情勢は混沌(こんとん)としており、先行きは見通せない」と口をそろえる。