「ハンセン病問題と新型コロナはすごく重なる」。差別、偏見を学ぶ若者たち。政治の表舞台に立つのは人権の重みを知る人であってほしい【U30のまなざし 衆院選鹿児島】

 2021/10/23 09:05
ハンセン病問題について自分たちができる取り組みを話し合う高校生=16日、鹿屋市の鹿屋高校
ハンセン病問題について自分たちができる取り組みを話し合う高校生=16日、鹿屋市の鹿屋高校
 鹿屋市の鹿屋高校の一室。今月中旬、インターアクト部の1、2年ら6人が集まった。ハンセン病問題について学ぶためだ。

 体の一部が変形することもある感染症だが、感染力は非常に弱い。医学的根拠のない国の強制隔離政策が偏見差別を深めた-。鹿屋を拠点とするNPO法人のメンバーの説明に聞き入り、熱心にメモを取った。

 2年前からこの問題に取り組む。同市の国立療養所「星塚敬愛園」を訪問し、啓発資料を映像化・英語化するなど積極的だ。2年の江川純平さんは「世界中の人に知ってもらい、偏見を無くしたい」と意気込む。

 若い感受性は、人の尊厳が奪われる理不尽さに敏感に反応するのかもしれない。ハンセン病問題を学ぶ若者は、県外にもいる。

 早稲田大学3年の後藤泉稀さん(20)は、敬愛園入所者の上野正子さん(94)の元を4度訪れている。広島県福山市の盈進中学高校在学時、ヒューマンライツ部の活動で岡山県の療養所「長島愛生園」入所者との交流を深め、敬愛園にも足を運んだのがきっかけだ。

 今月半ば、埼玉大学の福岡安則名誉教授(社会学)が開いたオンライン勉強会にも参加。国の隔離政策を違憲とした2001年の判決について「偽名を強要された正子さんにとって、本名に戻って人間として本当の自分を取り戻すことだった」と報告した。

 後藤さんが実践するのは、元患者と何げない日常を一緒に過ごすこと。その先に「誰もがカテゴライズ(区別)されず、1人の人間として当然の生活ができる社会」を願う。

 後藤さんは今、社会の空気に一種の息苦しさを感じている。

 新型コロナウイルス禍で移動や営業、イベントの自粛が要請された。感染への恐怖と不安が充満した。だが、科学的なデータを挙げながら施策の必要性を説く政治のリーダーの姿はなかった。友人と「ハンセン病問題とすごく重なる」と語り合った後藤さんの気持ちは理解できる。

 コロナ下、非常時に内閣に権限を集中する「緊急事態条項」を憲法に新設する動きが活発化している。「政府が強制力を持って対応すべきだ」「現行憲法下で対応可能」と世論は割れる。

 感染拡大の封じ込めと私権の制限は表裏一体の面がある。政治の表舞台に立つのは、先人が長い年月を掛けて勝ち取ってきた権利の重みを知る人であってほしい。そう思うのは、差別や偏見に敏感な若者たちだけではないはずだ。

 衆院選後にどんな世の中を目指すのか。候補者の考えに耳を澄ませたい。

取材後記・熱量に圧倒される

 2019年春に鹿屋総局に赴任してから、星塚敬愛園を中心にハンセン病問題を取材することが多い。この間、鹿屋高校や盈進中学高校が差別解消のために続ける取り組みを知り、その熱量に圧倒されてきた。政治がつくり出した差別と偏見の根深さに触れ、共生社会の在り方を考える彼ら彼女らの言葉に、政治家が耳を傾けるべきことは多いだろう。(片野裕之、29歳)
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