11代将軍・徳川家斉の屏風 下絵写し、鹿児島市で見つかる

 2021/11/18 07:48
朝鮮へ贈られた屏風(春秋花鳥図、右隻)の下絵写し=17日、鹿児島市の黎明館
朝鮮へ贈られた屏風(春秋花鳥図、右隻)の下絵写し=17日、鹿児島市の黎明館
 江戸幕府の11代将軍・徳川家斉が朝鮮国王へ贈った屏風(びょうぶ)10双分の下絵の写しが、鹿児島市の黎明館で見つかった。江戸期の朝鮮通信使が持ち帰った屏風は実物がほとんど残っておらず、研究者らは「実際の姿を知る手掛かりとなる貴重な資料」と語る。

 写しは今春、崎山健文学芸専門員(52)が玉里島津家資料から確認した。木箱に21枚が収められており、絵は縦50センチ、横110センチ前後。実物(縦約170センチ、横400センチ超)の準備段階で作る下絵を写したものとみられ、金彩の代わりに黄土色の絵の具を使用。鹿や馬などの動物、四季の景色、勇壮な武士の姿を緻密に描いている。

 箱や書き付けには「幕府が朝鮮へ贈った屏風下絵の写し」と記されていた。「春秋花鳥」「舞楽」「頼朝富士牧狩」といった画題が全て幕府などの記録と一致。同館は1811(文化8)年の通信使に対する返礼品に関わるものと判断した。筆者や伝来の経緯は不明。崎山学芸専門員は「将軍が外国に伝えたかった日本の美を、高い技巧で描いている」とみる。

 屏風研究の第一人者で岡崎市美術博物館(愛知県)の榊原悟特任館長(73)によると、江戸後期までの約200年間に計190双(380枚)が朝鮮に贈られたが、実物は6点、下絵は1点が残るのみ。榊原特任館長は「文字の記録だけでは分からない、構図や彩色を知ることができる」と研究の進展に期待する。

 黎明館は12月21日から一連の写しを企画展「玉里島津家資料展」で公開する。
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