白髪婦人の首に残されたのは、ドラキュラの牙が付いた入れ歯…「みんな高齢」だから 92歳現役漫画家の作品「渡る世間は面白い」 戦争生き延びた体験が一コマ風刺の原点

 2022/06/10 16:45
坂井せいごうさん=鹿児島市紫原3丁目
坂井せいごうさん=鹿児島市紫原3丁目
■第51回日本漫画家協会賞「まんが王国・土佐賞」を受賞した

坂井せいごうさん

 逃げ去るドラキュラ、白髪のレディーの首に残されたのは牙の付いた入れ歯…。「みんな高齢」の題に吹き出してしまう。

 92歳の現役漫画家が半世紀を超える画業をまとめた「渡る世間は面白い」(南日本新聞開発センター)が、日本漫画家協会賞の「まんが王国・土佐賞」に選ばれた。漫画界に貢献した団体や個人に贈られる賞。「一こま漫画の魅力を知ってもらえたらうれしい」と笑みを浮かべる。

 国際社会、少子高齢化、ジェンダー問題と、多彩な作品を貫くのは、世相をユーモアに包んで笑い飛ばす姿勢だ。海外での受賞歴も多く「ユーモアは万国共通。言葉はなくても通じる」

 少年時代は戦争一色だった。旧制川内中学校で勤労奉仕に駆り出され、出水から出撃する特攻機を目にした。「自分も特攻に行く」と海軍予科練に入ったが、その夏に終戦。「生きて帰れることに驚いた」。その体験が風刺の原動力になっている。

 20代で結核を患い、鹿児島市で療養中に投稿を始めた。1958年、南日本新聞の「南日本漫画展」で県知事賞。福岡市に仕事場を移し、新聞連載やアニメーションなどを手掛けた。

 10年前、妻・和子さん(故人)の病気治療のため帰郷した。今は雑誌や展覧会用に描く。「締め切りに追われず、ゆっくり取り組めて一番楽しい」。健康維持の秘訣(ひけつ)は1日3回の体操という。本紙に「なんにち漫評」を執筆した漫画家の坂井貞夫さん(83)=姶良市=は実弟だ。鹿児島市紫原3丁目。