「人生の半分が事件との闘い。あんな辛抱強い女性はいない」 大崎事件の84歳初代弁護団長、95歳原口さんと交わした手紙は50通以上 無罪確信「証拠そろっている」

 2022/06/25 09:30
一貫して無罪を訴えている原口アヤ子さんは15日で95歳になった。再審開始への闘いは続く=15日、県内(大崎事件弁護団提供)
一貫して無罪を訴えている原口アヤ子さんは15日で95歳になった。再審開始への闘いは続く=15日、県内(大崎事件弁護団提供)
 義弟への殺人と死体遺棄の罪で満期服役した原口アヤ子さん(95)が最初に裁判のやり直しを求めた第1次再審請求から27年。弁護団が「事故死」を裏付ける「過去最強の新証拠」と自信を持って臨んだ第4次再審請求は22日、鹿児島地裁に棄却された。弁護団は「不当決定」直後から福岡高裁宮崎支部に即時抗告する準備に入った。

 抗告申立書の起案を手掛けるのは「足利事件」で再審無罪を勝ち取った佐藤博史弁護士(第2東京弁護士会)。第2次から「大崎事件」の弁護団に加わる。

 佐藤弁護士の起案を基に、鹿児島を中心に九州、関東、関西の弁護士が27日に迫る抗告期限に向け、オンラインで意見交換を繰り返す。泉武臣弁護士(鹿児島県弁護士会)は「決定の不当さを追及し、裁判所に考えを改めさせるしかない」と力を込める。

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 日弁連の支援対象になっている大崎事件の弁護団には60人以上が名を連ねる。「不当決定」の旗が掲げられた22日の鹿児島地裁前には、その一人で、一線からは退いている初代弁護団長、亀田徳一郎弁護士(84)の姿もあった。

 「気付けば私もアヤ子さんも人生の半分を事件と闘っている。あんなに辛抱強い女性はほかに知らない」

 2人の付き合いは最高裁で懲役10年が確定した1981年、原口さんの親族に再審請求を依頼され、拘置所を訪れたのが始まりだ。

 面会室で懸命に無罪を訴える原口さんに圧倒されたが、完全には信じ切れずにいた。佐賀県鳥栖市の刑務所に収監された原口さんを訪ね、無罪を確信した。「罪を認め反省すれば仮釈放もある」と言われたが、「やっていないことは反省できない」と断ったと聞いたからだ。

 刑務所にいた原口さんと交わした手紙は50通以上という。「自殺したいと思うときもありますが、私が死んだら誰が無罪を訴えるのでしょう」。自問するような言葉がつづられていた。署名活動で県内外をともに駆け回り、第1次再審請求では地裁の再審開始決定を喜び合った。今もゴールは見えないが、弁護団の闘いに期待を込める。「証拠はそろっている。大丈夫」

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 「あたいはやっちょらん」。取り調べ段階から一貫して否認してきた原口さんは今月15日、95歳になった。県内の医療機関に入院している原口さんに、無罪への扉はまたしても開かなかった。

 22日の地裁の再審請求棄却には刑事訴訟法を専門とする学者有志だけでなく、元裁判官らも「説得力がない」と批判の声を上げた。日弁連はその日のうちに「到底是認できない」とする会長声明を発表した。

 弁護団の鴨志田祐美事務局長は24日、今後も続く闘いへの決意を語った。「第4次請求で出した新証拠で再審が開始されるという自信は全く揺るがない。アヤ子さんの無罪を勝ち取るまで諦めない」