76年の歴史に幕 小料理屋「芝楽」 元店主「ちーちゃん」転居先探し 常連客が奔走 86歳、独り身…見守り兼ねた〝定期宴会〟も

 2022/11/21 12:12
常連客が作った集金箱を持つ須藤千鶴子さん=鹿児島市西千石町
常連客が作った集金箱を持つ須藤千鶴子さん=鹿児島市西千石町
 店舗契約が切れるのを機に、10月末で76年の歴史に幕を下ろした鹿児島市西千石町の小料理屋「芝楽(しばらく)」。親子2代で店をつないだ歩みを紹介した南日本新聞の記事を受け、「ちーちゃん」の愛称で慕われた店主の須藤千鶴子さん(86)の元には、多くの訪問者やねぎらいの声が届いた。転居先を新たな憩いの場にし、独り身で高齢の須藤さんを見守っていこうと、常連客が“定期宴会”の資金を集める動きもある。

 記事が掲載された11月4日、旧友や常連客の電話が相次いだ。鶴丸高校時代の同級生やバレー部の仲間も訪れ、昔話に花を咲かせた。

 聞き上手な接客に徹してきた須藤さん。2人の幼い子どもを病気で亡くしたことや、夫との別れなど記事で身の上を知った人がほとんどで、なじみ客の「客への愛や苦労を知って泣いた」との言葉にうれし涙を流した。

 11月末には店舗隣の自宅を離れ、店は取り壊される。転居先にと2年前から市営住宅に応募したものの、抽選に8回外れた。常連客2人が連帯保証人になり賃貸住宅を探してくれたが、孤独死や家賃滞納への警戒からか、高齢で独り身の契約に応じる大家や不動産店は少なかった。10月、ようやく転居先が見つかった。

 店では年3回、常連客同士が花見や新年会などを楽しむのが恒例だった。須藤さんは、転居後もみんなで集まれる場所を用意したいとワンルームではなく2Kにこだわった。そんな思いを知った常連客の自営業豊山博久さん(52)は、新たな住居を親しみを込め、「料亭芝楽」と呼び、宴会費用などを募る「入会金箱」を作った。

 集金箱は最終営業日の10月29日ごろ、店に置かれ、閉店後も常連客らが店を訪れ、お金を入れている。いくら集まったか、須藤さんはあえて見ていない。

 「みんなのお母さんのような存在。つながり続ける機会をつくり、ずっと支え合っていけたら」と豊山さん。須藤さんは「温かい気持ちがうれしい。引退してからも、みんなの好きなギョーザと卵焼きくらいは作ろうかな」とはにかんだ。