米軍無人偵察機MQ9の運用が始まった鹿屋。「ダイスキ デス」と普段着姿で街を歩く司令官。元自衛官も「話せばすぐに打ち解ける」と言う
2022/11/27 07:30
中西茂市長(中央手前)と話す米軍のアレクサンダー・ケリー司令官(中央奥)=11月5日、鹿屋市の海上自衛隊鹿屋航空基地(山崎卓世撮影)
鹿屋への配備は日米防衛相が会談で歓迎を表明。重視ぶりを象徴するように、在日米軍トップら軍幹部の鹿児島入りが相次ぐ。ただ、重々しい計画とは裏腹に街で見せる米兵の姿は柔らかだ。
無人機のエキスパートであるケリー中佐も普段着姿で街を歩く。鹿屋に着任して間もない10月には、飲食店が開いた日本語教室に参加。部下3人とともに「ダイスキ デス」などと愛きょうを振りまいた。
「歓迎されてうれしい」と笑顔の一行に、店員は「気軽に店に入って」と商売っ気をのぞかせた。
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米兵ら最大200人が暮らす-。春から続く計画は7月に準備部隊が現地に入り、大隅半島の10万都市の空気を静かに変えている。
「実際に話をしたら、すぐに打ち解けるよ」。鹿屋市でライブバーを経営する元航空自衛官の杉山裕己さん(61)は話す。夏に来店した米兵は即興でドラム演奏し、地元歌手とオールディーズを熱演してみせた。
自衛官時代に米軍と仕事をした杉山さんは「仲間のような」親近感を抱き、退官後開いた店に日米の国旗を掲げる。米軍への懸念が根強いことも分かるが、「ごく少数が悪いことをするのはどこも一緒。駐留はお互いを分かり合える絶好の機会」と期待する。
今、米兵らが運転するYナンバーの車は鹿屋で珍しくない。防衛省は交通違反がないよう研修を繰り返し、市が求めた追加の講習にも応じた。
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懸念は最悪のタイミングで訪れた。部隊運用の開始発表当日の今月18日、米兵の車と女子高校生のミニバイクが接触。生徒は軽傷を負い、市は部隊に即日抗議し対策を要請した。
「不幸中の幸い」。九州防衛局の遠藤敦志企画部長は報告時、記者団を前に事故をこう表現した。住民からは「事故があるだけで不安になる。それを分かっていない」と憤りの声が出た。
米兵らの事件事故の対処が一般と違うのは、戦後一度も改定されていない日米地位協定があるためだ。捜査権などを制限する「特権」が繰り返し問題となってきた。
米軍との調整に当たる九州防衛局は鹿屋基地内に連絡所を設置。約10人が交代で勤務し、毎晩、繁華街を車と徒歩で回る。関係者の1人はこぼす。「駐留1年は長丁場。とにかく無事を祈るしかない」
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中国やロシア、北朝鮮に囲まれた日本の安全保障政策が大きく変わろうとしている。鹿屋、西之表市馬毛島、奄美大島…。日米が一体化を目指す中、鹿児島はその激動の渦中にいる。終戦後の進駐軍以来、県内で初めて米軍の駐留が始まった鹿屋を見つめる。
(連載「安保激変@鹿屋 米軍がやってきた」より)
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