〈続々「国宝 霧島神宮 密着24時間」〉国宝指定後は夜間も参拝者が増えた。「晴れて乾燥した日は緊張する」。巡回の権禰宜は喫煙所を入念に確認した

 2022/12/03 21:09
夜の境内を巡回する宿直の税所秀一権禰宜=午後7時40分ごろ
夜の境内を巡回する宿直の税所秀一権禰宜=午後7時40分ごろ
 色鮮やかな振り袖や袴(はかま)姿の子どもたちが家族に手を引かれて次々と訪れる。神楽殿は七五三の祈願のため多くの人でにぎわっていた。さまざまな祈願は年間約1万件になるという。

 午前11時半の祈願祭には約70人の家族連れが参加。姶良市から4世代で丹音(あかね)ちゃん(3)の七五三に訪れた母親の緒方実希さん(36)は「お宮参りの時と比べると大きくなった」と目を細めていた。

 お守りなどを扱う授与所にも人だかりができ、書道の師範の資格を持つ新海晴香録事(ろくじ)=23歳=が休みなく御朱印を書いていた。1枚あたり2分ほどかかり、平日は1人で100枚、土日曜は2人体制で200~300枚をこなす。

 新海さんは霧島市国分出身。書道の腕を買われ、短大時代から繁忙期にアルバイトをしていた。卒業後、正式に職員となり3年目。「大切な思い出になるので、忙しくても一枚一枚心を込めて仕上げている」

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 午後3時。社殿では神職と巫女(みこ)が御日供祭(おにっくさい)のお供えものを片付けていた。午後4時ごろまでにご神鏡の前に御簾(みす)を下ろし「神様にも休みに入ってもらう」。

 午後5時。守衛の梶原春海さん(66)が出勤してきた。夜間は、守衛と宿直の神職と一般職員、民間の警備員の4人体制で緊急時に備える。常に社殿の周辺には人がいるようにし、1時間置きに見回りをする。「国宝に指定されてから夜間も参拝者が増えた。迷って山に行ってしまう人もいるので声かけをしている」

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 午後7時半。灯籠とわずかな照明を除くと境内は真っ暗だった。社務所前では宿直の税所秀一権禰宜(ごんねぎ)=51歳=が無線機と懐中電灯を持ち、巡回をしていた。

 施錠忘れや不審車両がないかを30分ほどかけてチェック。「晴れて乾燥した日はとても緊張する。木が多いので、たばこの火の不始末があれば、燃え広がりかねない」と2カ所の喫煙所を特に入念に確認していた。仮眠に入るのは午前0時ごろ。不審者の情報があればすぐに駆け付けられるよう、眠りは浅い。

 午前4時半に起床、再び一日が始まる。「宿直は長丁場。何事もなく終わると心の底から安心する」

 国宝指定を受け、伝統をつなぐ責任はより重くなった。火災時に迅速に対応するため、神宮がある番地内に神職のほぼ全員が住む。「先人たちの一日一日の努力があったから、今の社殿が維持されている。今後も全員でこの場所を守る」と力強く語った。

 正月三が日にはコロナ前並みの30万人の人出を見込む。年始に向け、神宮は日々せわしさを増していく。

 ■霧島神宮の神職らの職階 現在、14人の神職がいる。慶光院利致(けいこういんよしかず)宮司が代表者。副代表の権宮司が1人。部長にあたる禰宜が2人おり、それぞれ総務と祭典・境内管理を担当。その下に権禰宜が9人おり、ここまでが“一人前”の神職とされる。主典(しゅてん)と呼ばれる修業中の神職も1人。そのほか巫女が10人、一般事務を主に担当する録事が5人いる。

(連載「国宝 霧島神宮 密着24時間」㊦より)