鹿児島市のサッカースタジアム構想 ますます窮地に…候補地3カ所すべてに新たなハードル、整備見通せず

 2023/02/04 15:00
鹿児島市のスタジアム候補地の浜町バス車庫(手前)=1月12日、本社チャーター機から撮影
鹿児島市のスタジアム候補地の浜町バス車庫(手前)=1月12日、本社チャーター機から撮影
 鹿児島市が鹿児島港本港区の3カ所で検討するサッカー等スタジアムの整備地が見通せなくなってきた。候補地の一つ、浜町バス車庫は敷地の大半を所有するいわさきグループ側が市に取り下げを要請。本港新町の県有地ドルフィンポート(DP)跡地については、整備に不可欠な隣地の「ウオーターフロントパーク」を保全する方向だ。同じく県有地の住吉町15番街区も鹿児島商工会議所がスタジアム以外の使途を提案。市は中心市街地への経済効果など「街なかスタジアム」の必要性を訴え、整備地選定に道筋を付けたい考えだ。

 「5年前、市のためにとの思いから浜町を候補地として了承したが、取り下げる」。1月26日、いわさきコーポレーションは岩崎芳太郎社長名で下鶴隆央市長宛てに文書でこう申し入れた。名誉毀損(きそん)に該当するような風評が一部であったとしている。

 下鶴市長は同30日取材に応じ、「(いわさき側から)一定の意思が示された」との認識を示したものの、今後については「精査中」と繰り返した。市関係者からは「公文書として出された。浜町は無理だろう」との声が漏れる。

■言われなき疑念

 岩崎社長は鹿児島商議所の会頭を務め、現在4期目。経済団体トップとして、県の本港区エリア利活用検討委員会の委員にも名を連ねる。

 商議所は24日、本港区エリアを含む街づくりの提言を公表。翌25日には検討委で概要を説明した。

 DP跡は県が整備する新総合体育館(スポーツ・コンベンションセンター)とし、「ウオーターフロントパーク」はオープンスペースとして確保する。住吉は観光客らを受け入れる施設やホテルを中心とした開発を想定。両敷地ともスタジアムには触れていないため、提言に沿えば、候補地から外れる。

 残りは浜町となるが、いわさき側は市への申し入れで「利益誘導とする風評が一部にある」と指摘。「候補地(浜町)の所有者でもあり、最大限の気配りを行ってきた。会頭職としての責任の遂行について言われなき疑念などで支障が出ないため」として、除外を要請した。

■部分的活用に含み

 いわさき側が「浜町撤回」を申し入れる前日の25日、検討委ではDP跡とウオーターフロントパークの扱いが議論となった。

 下鶴市長は3候補地のうち、経済波及効果などを踏まえDP跡を優位と位置付ける。市の案ではDP跡と同パークを一体的に活用し、県の新総合体育館とスタジアムを併設する。

 検討委で約1時間半の議論後、北崎浩嗣委員長(鹿児島大学教授)は多様な意見を集約し、同パークを保全する方向でまとめに入った。このまま方向が固まれば、DP跡でのスタジアムは難しくなる。だが、市代表委員である松山芳英副市長の発言はなかった。

 北崎委員長は閉会後、「否定的な意見は出なかった、基本的に残す方向で議論を進めていく」と明言。ただし「そのまま残すこととは捉えていない」とも述べ、部分的に他に活用する考えにも含みを残した。

 市は「ハードルは高くなった」としつつ、スタジアムの可能性は残っているとみる。次回会合で、施設の機能、経済効果、回遊性などについて詳細に説明し理解を求める考えだ。

 商議所が提言で触れていない住吉町15番街区のスタジアム案について、県は検討の余地を残している。新総合体育館の基本構想では駐車場にするが、スタジアム整備地になった場合は県営駐車場の立体化などの検討を明記している。