自衛隊は「つぶれない大企業」 奄美の高卒入隊者、10年で4倍 有事を思うと「本音は…」親の胸中複雑
2023/03/03 08:30

自衛隊入隊を控え、担当者の説明を聞く生徒ら=2月、奄美市名瀬
同事務所は隊員募集や広報活動で「国防、災害派遣、国際平和協力が任務。自衛隊は戦う組織ではなく、守る組織」と説明してきた。管轄する奄美地区(奄美大島、喜界島)の入隊予定者は30人前後で、女性が3分の1を占める。
空自を選んだ奄美高校3年の森元美憂さんは「日本を守り、他国を支援する任務にやりがいを感じる。貢献したい」と語った。
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奄美地区五つの高校の3年生は2009年度に772人いた。21年度は478人と約10年間で4割減った。逆に自衛隊の入隊者数は4倍超の約30人に増え、特に陸自の希望者が多い。
同事務所の渡邊繁樹所長は、19年3月に新設された陸自奄美駐屯地(奄美市)と瀬戸内分屯地(瀬戸内町)を挙げ、「住民に身近になった」と強調する。中高生向けの講話や職場体験も入隊につながっているとみる。
奄美駐屯地と瀬戸内分屯地の隊員数は計約600人。ある商工業者は「大きな雇用を生む有力な就職先。とてもありがたい」と実感を込める。「つぶれない大企業」と呼ぶ関係者も少なくない。
隊員600人の2割近くは奄美群島出身者だ。陸自の場合、奄美にある普通科や通信科といった職種の隊員は、希望を出せば地元で勤務できる可能性が大きいという。そのため島外の部隊にはUターン希望者が多いとされる。
同事務所の榮真路広報官は奄美市出身の航空自衛官。同市笠利に空自の奄美大島分屯基地があったことが入隊理由の一つだった。整備工事が本格化した西之表市馬毛島の自衛隊基地に関し、「完成すれば種子島での応募者もきっと増える」と話す。
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順調に推移してきた奄美地区の入隊者数は本年度、21年度に比べて若干減る見通しとなっている。ロシアのウクライナ侵攻が原因の一つとみられる。「戦地に行かされるのでは」と心配する保護者がいたという。
南西諸島を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、わが子を自衛隊に送り出す親の胸中も複雑だ。奄美市の女性(45)は家族と親戚全員が反対したといい、「最終的に本人の意思を尊重した」と語った。
同市の女性会社員(48)は「大変な事態が起きた時に働くのが自衛隊。誰かがしなければいけない仕事だ」と理解する。入隊する娘には「頑張れ」と声をかけているが、「本音は入ってほしくない」と打ち明けた。
(連載「盾から矛へ 安保激変@奄美」5回目より)
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