「奄美にミサイルは要らない」と抗議しても最近は「目障り」と。自衛隊反対派は残念がる。「安全のための活動がなぜ敬遠されるのか」
2023/03/04 08:30

陸上自衛隊奄美駐屯地のイベントで車両に試乗する来場者=2月5日、奄美市名瀬
日高正暁司令は訓示で、中国やロシア、北朝鮮を名指しし「脅威が顕在化している」と危機感を隠さなかった。
同駐屯地の一般開放は新型コロナウイルス禍の影響で、開設後初めてだった。訪れた家族連れら約3000人は普段見ることのない訓練に拍手や歓声を上げ、ミサイル発射装置などに試乗。部隊の緊張とは裏腹の光景が広がった。
一方、イベントをニュースで見た奄美市の主婦満尾環さん(45)は「部隊にミサイルがあると知らなかった」と驚き、不安になった。「祖母が戦時中、空襲を恐れて山に逃げた話を思い出した。何かあれば標的にならないか」
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奄美には昨年、米軍が訓練で2回訪れ、機動性の高いロケット砲「ハイマース」を搬入した。有事の際は離島に小規模部隊を分散させて戦う態勢を整えており、奄美を重要な「足場」と捉える。
米輸送機オスプレイも空港に頻繁に飛来。昨年11月の日米共同演習では駐屯地のヘリポートに離着陸した。関誠之市議は「駐屯地側は開設当初、耐熱処理をしておらず、オスプレイは降りられないと説明した」と憤る。「防衛省は正直に語らない。うそは戦争の始まりだ」と断じる。
反対派住民は演習や戦闘車両の展示イベントのたびに、のぼりを掲げて「奄美にミサイルは要らない」と訴えてきた。しかし、最近は見物客から「目障り」といった声を向けられることもある。
「安全のための活動がなぜ敬遠されるのか」。反戦市民団体の城村典文さん(70)は残念がる。「島民はあまりに従順だ。地上戦になり部隊が住民を守ってくれなかった記憶が残る沖縄とは全く違う」
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米軍は奄美への来島時に、英会話講座などで地元と交流する。自営業の男性(42)は米兵らを見て、父から聞いた戦後の米軍統治時代の話を思い出した。
1946(昭和21)年から日本復帰までの約8年間、市街地には米兵の四輪駆動車が列をなし、島民は食料や衣服をもらっていた。「逃げ場のない島。来る者とうまく付き合うしかなかったのだろう」
ただ、有事の際は米軍基地のある沖縄でも本土でもなく奄美が狙われやすいと感じる。「増強した方がいいのか、正直分からない」と戸惑う。
20代女性は、部隊が「人を撃つ」訓練を重ねていることに衝撃を受けたと明かす。「あの光景が島で現実になったら…。多くの人が無自覚に受け入れる空気感が怖い」
(連載「盾から矛へ 安保激変@奄美」6回目より)
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