高度340メートル、サトウキビ畑へパラシュート降下 陸自の精鋭・第1空挺団 離島防衛を想定、緊張の喜界島上空

 2023/03/06 11:42
降下直前、立ち上がり合図を待つ橋口剛さん(中央)=喜界島上空
降下直前、立ち上がり合図を待つ橋口剛さん(中央)=喜界島上空
 離島防衛を想定した陸上自衛隊と米軍の共同訓練の一環として3日、陸自第1空挺(くうてい)団(千葉県船橋市)が鹿児島県の喜界島で初の降下訓練をした。隊員は有事や大災害の際、パラシュート(落下傘)を使っていち早く現場に入る陸自の精鋭だ。空自輸送機C1で島に向かった21人と同乗し、緊張感あふれる降下の瞬間を間近に見た。

 朝6時半、航空自衛隊入間基地(埼玉県狭山市)では隊員が装備や降下動作を確認していた。今回の着地点はサトウキビ畑。演習場とは違う島への降下に、張り詰めた空気が漂う。

 輸送機に乗り込み、中継地の海上自衛隊鹿屋航空基地(鹿児島県鹿屋市)で装備を着ける。重さ約18キロの落下傘、それが開かなかった場合の予備傘約7キロ、水や防寒着が入った約20キロのリュックサック、小銃など計約60キロ。装着後はトイレにも行けない。

 鹿屋基地をたち、喜界島上空へ。風の状況を確認するため、まず先発隊が飛ぶ。喜界出身の1曹、橋口剛さん(44)。東日本大震災直後の福島でも活動した降下106回目のベテランだ。

 6分前。橋口さんが命綱となるロープのフックを天井のワイヤに掛けた。落下傘が開けば自動で外れる。2分前、ドアが開いた。冷たい風が一気に入り、立つのがやっとだ。高度340メートル。眼下の海岸や畑がどんどん流れていく。ここから飛ぶのか-。ベルが鳴り、ドア横にある赤いランプが緑に変わった。降下を指示する隊員に促され、橋口さんが宙に浮いた。

 機体は旋回し、今度は10人が2列に並んだ。フックを掛けもう一度入念に装備を点検。合図で左右のドアから次々に飛び出した。

 今回の訓練では、米軍輸送機2機に乗った81人の隊員も降下。多くの地元住民が見守る中、全員けがなくエリアに降り立った。米軍機からの降下を終えた喜界出身の2曹、橋本真悟さん(36)は「島の皆さんや部隊の協力で無事に訓練でき感謝しかない」と話した。

 空挺団を紹介するパンフレットに「国家の危機に際し、身を挺してあらゆる任務を果たすことが求められる部隊」との言葉があった。

 橋口さんは「本当は空挺団が活躍する場面はない方がいい」としながら「私たちには使命感がある。いざとなったらいつでもどこでも降りられるよう訓練を積んでいる」と強調した。