「いつも同じ服だね」「更年期か?」 上司のハラスメントでうつ状態に…女性は退職に追い込まれ「加害側は野放し」

 2023/03/16 11:00
上司のハラスメントをつづったメモを示す女性=2月、鹿児島県内(画像は一部加工しています)
上司のハラスメントをつづったメモを示す女性=2月、鹿児島県内(画像は一部加工しています)
 「いつも同じ服を着ているよね」「更年期か?」。鹿児島県内の女性は、男性上司から受けたハラスメントをメモにつづっている。

 きつく当たられ、意見を聞いてもらえない。職場の飲み会の後、恐怖を感じるほど肩を強くたたかれたり、性行為を連想させるような話をされたりした。

 責任者に報告すると、上司は「覚えていない」と言いつつ謝罪には応じた。ただ、パワハラやセクハラによる懲戒規定はなく、処分は注意で終わった。それ以降、上司から無視された。

 朝起き上がれず、1日中涙が止まらなくなった。うつ状態に陥り、医者の助言を受けて退職した。今も薬を飲み、通院している。

 「加害側が野放しなのは悔しい。弱い立場の人は苦しむしかないのだろうか」。女性は目を潤ませた。

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 南日本新聞が県内の民間で働く約2000人から回答を得たアンケートでも、多くのパワハラ・セクハラ体験が寄せられた。

 「『ババアはパソコンの覚えが悪い』と聞こえよがしに話す」(鹿児島市・40代女性)。「怒鳴り散らし、周りは見て見ぬふり」(同・60代女性)。パワハラで「死にたいと思い詰めた」という40代女性もいた。

 「上司が女性の新人社員にキスして泣かせた」(霧島市・40代男性)など、ハラスメントが起こる職場に嫌悪感を抱く男性も少なくない。事業主はセクハラやパワハラの防止が義務付けられているが、取り組みは十分とは言えない。

 鹿児島労働局が管内で2021年度に受けた相談1万4073件のうち、パワハラ、セクハラを含む「いじめ・嫌がらせ」は過去最多の1475件。4年連続で千件を超えている。

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 「熱心に指導しただけ」「場を和ませるためのいじり」。相談が増加する背景には、こうした誤ったコミュニケーション意識があるとされる。

 千葉大学非常勤講師の清水知子さん(57)=東京都=は「ハラスメントを放置すれば企業の存続にかかわってくる。社会的信用を失い、人材流出も起きる」と指摘。「許さない社内風土を築くことが急務だ。トップの姿勢が問われる」と強調する。

 知的障害者に福祉サービスを提供する社会福祉法人「敬天会」(姶良市)は、ハラスメント対策に力を入れる。相談は複数の担当者が担い、約150人の職員に交流サイト(SNS)でアンケートし把握に努める。

 職員の人権意識を醸成しようと、定期的にワークショップ形式で研修会も開いている。総務課リーダーの伊東奈及美さん(59)は「ハラスメントをした人は無自覚な場合が多く、繰り返しやすい。意識を変える取り組みが大切」と話す。

(連載「働く 平等ですか?かごしまの職場から」より)