一級河川では珍しい「ホタル舟」存続の危機 川内川1団体が今季で運航終了 残る1団体にも「大きな課題」

 2023/03/18 21:30
舟の上からホタルの乱舞を楽しむ見物客=2017年5月、さつま町二渡
舟の上からホタルの乱舞を楽しむ見物客=2017年5月、さつま町二渡
 鹿児島県さつま町二渡地区の地元有志は、川内川で運航するホタル舟を今季で最後にすると決めた。ホタルの減少と、スタッフの高齢化が主な理由。神子地区で運航する団体は同様の課題を抱え、今季の実施を見送る。ホタルは町の昆虫にも指定されているが、川の増水の影響で減っており、関係者は今後の回復を願っている。

 川内川のホタル舟は、「二渡がらっぱボタルの会」が二渡地区で、「奥薩摩のホタルを守る会」が神子地区で、それぞれ20年ほど前から運航する。一級河川でホタルが群舞するのは全国的に珍しく、関東や関西から訪れる人もいる。

 ホタルの数はこれまでも川の増水によって増減を繰り返してきた。「ボタルの会」の下麦清正会長(71)によると、2006年の県北部豪雨災害後に激減。10年ほどかかってある程度回復したが、21年には線状降水帯による豪雨があり、それ以降は少ない状況が続いている。例年3月に上陸する幼虫は今年も少ないという。

 地元有志でつくるボタルの会の運営スタッフは多くが70代で、ここ3年は新型コロナウイルスの影響で運航できずにいた。下麦会長は「ホタルはまた増えてくるはずだが、メンバーの気力、体力がなくなってきた。最後になるのは残念だが、仕方ない」と話す。

 ボタルの会より上流で運航する「守る会」にとってもホタルの減少、スタッフの高齢化は大きな課題となっている。今季まで運航を中止し、船頭の育成やホタルの生息状況の確認を進める考えだ。栗野明男会長(69)は「ホタル舟は町の大きな観光資源。ホタルの回復を期待しつつ、来年に向け準備を進めていきたい」と話している。